最低賃金1500円?職種別賃金相場が形成される!

今年は過去最大の上げ幅で最低賃金が上がります

Y社長「先生、今年(2023年)の10月の最低賃金アップのときに上げるの面倒だから、もう当面上げなくていいように6月の昇給でパートさんの賃金をアップしておきたい。どのくらい上げたらいいの?」

福田「今年(2023年)の最低賃金は過去最大の上げ幅になるでしょう。全国平均で39円以上、上がると思いますよ。厄介なのはその後です。当初の目的の全国平均1000円がこれで達成されますが、それ以降のアップも必ず定期的に行われるはずです。上げなくても良いようにしようと思えば、少なくとも40円以上ベースアップする必要がありますね。社長のところは東京にも店舗がありますね。そうなると50円以上かもしれません。」

Y社長「それはきついな・・・。やっぱり、10月(最低賃金の上げ幅が決まったとき)に考えるわ~。」

内閣官房新しい資本主義実現本部事務局は、最低賃金引き上げ等について以下のように示しています(三位一体労働市場の改革論点案2023年4月12日)。

①最低賃金について、昨年は過去最高の引き上げ額となったが、今年は全国加重平均1000円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会でしっかりと議論をいただく。

地域間格差の是正を図るため、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げることも必要 。

③今夏以降は、1000円達成後の最低賃金引き上げの方針についても議論を行う。

最低賃金は1500円に向けて歩みをはじめるはず!

上記の方針についてコメントします。

①について、本来のペースであれば、コロナがあったので、来年(2024年)に1000円に到達予定であったが、政府は前倒しで賃上げを促したいわけです。だから過去最高の上げ幅となります。

②について、4月6日に最低賃金目安の区分が、4つから3つに見直されました。東京と地方の格差を無くす方向です。つまり、地方の賃上げをより促したい。

③について、実は日本の最低賃金は、イギリス約1900円、アメリカ約2150円の半分以下です。韓国の991円にも及ばないのです。日本も、長く見積もって10年以内には、官製賃上げにより1500円以上になるでしょう。

高卒初任給が25万円以上になり、職種別賃金相場が形成される

低賃金が全国平均で1500円になれば、月間所定労働時間170時間とすれば月給は基本給255,000円です。最低賃金ですから、高卒初任給がこの金額と考えていいでしょう。そうなると、大卒初任給は28万円~30万円となっているはずです。

大卒で30万円で入り、誰もが50歳で賃金のピークを迎える日本型の職能給のモデルは破綻します。

私は今後かなりの精度で職種別の賃金相場が形成されていくと予想します。薬剤師でキャリア◯年、建設現場代理人キャリア◯年、✕✕の分野のエンジニア キャリア◯年で年収いくら、などが明確になっていくのではないかと考えています。

賃金はマーケットの論理で決まります。日本は今まで内部労働市場(内部公平性)を重視するあまり、あまりにも会社内の論理が強すぎました。それに対して、これからは完全なジョブ型とまでいきませんが、外部労働市場(外部公平性)の論理を会社は無視できなくなっていくのです。

転職エージェント、転職サイト、転職サポートビジネスがさらに興隆し、転職したら年収が上がることがネットで手にとるようにわかるインフラが整いつつあります。

「彼を上げたら、彼女とのバランスがとれないじゃないか」「今年はウチにとって例年にない賃上げ率だ」「彼は人事評価でまだ✕✕や◯◯の能力が足りない」など、「ウチ」の理屈は通用しにくくなります。

私どもの統計づくりも、学歴・職種職務を重視した賃金統計に切り替えていくことが必要となっています。中小企業にとって人の採用・定着困難時代がこれからますます加速する大変な時代になります。私も含めて中小零細企業の社長は、どこか勤めに行ったほうが賢明かもしれませんね。

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