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布陣

管理職になりたくない、不在の時代の生き残り方

黒子の手記

「うちの優秀な若手まで、誰も課長や部長になりたがらない。『今のプレーヤーのままでいいです』『責任や残業が増えるのはちょっと…』って露骨に逃げる。このままじゃ、5年後、10年後の組織なんて作れないよ」

社長室のソファで、頭を抱えながらこうこぼす社長の姿。社員数が50名、100名と組織が拡大していく壁にぶつかっている企業で、本当によく遭遇する光景である。

かつて、私たちが若かった頃は「出世してポストに就くこと」が、働くモチベーションの最も分かりやすいゴールだった。しかし、今の現場では全く違う。むしろ、管理職への昇進が「罰ゲーム」のようにすら受け取られている節がある。

彼らはなぜ、そこまでして管理職というポジションを避けるのか。意欲が低いからだろうか。根性がないからだろうか。いや、そうではない。

問題の本質は、現代の管理職というポジションが「一人で抱えるにはあまりにも無理のあるスーパーマン」を要求されていることにある。

少し、いまの現場の状況をリアルに想像してみてほしい。

一つの職場に、18歳の新入社員から70代後半の再雇用シニアまで、年齢も働き方の価値観もバラバラなメンバーが混在している。雇用の流動化(雇用形態・労働時間・テレワーク等)が進み、会社への帰属意識がかつてほど高くない若手社員も珍しくない。

その上、ビジネスの環境変化はめまぐるしく、常に新しい知識や技能のアップデートがプレイングマネージャーとして求められる。さらに、少し指導のトーンを間違えれば「ハラスメントだ」と問題になり、部下のメンタルヘルスにも細心の注意を払ってケアしなければならない。

自身の重い業務目標を達成しながら、これだけ複雑に絡み合った人間関係と、多様な感情のマネジメントを同時に行う。これが、今の時代の管理職に求められている「当たり前」の仕事なのだ。この負荷に見合った賃金がえられるかというと管理職手当はつくが残業代がなくなるので、割に合わないと考えるのは無理もない。

これをたった一人の人間に任せるのは、控えめに言っても限界を超えている。優秀な若手ほど状況をよく見ている。彼らが「自分には無理だ」「やりたくない」と思うのも、ある意味で非常に冷静で正常な判断だと言えるのではないだろうか。

では、この「管理職不在の時代」において、中堅・中小企業はどうやって組織を回し、生き残っていけばいいのか。

答えはシンプルである。「万能なスーパーマン」を社内に探すのを、すっぱりと諦めることだ。現実的に、そんなすべての能力を兼ね備えた人材は皆無に等しい。

解決の方向性は、「管理職の役割を切り分ける」という発想の転換にある。

例えば、管理職が持つべき機能を「仕事の専門管理職」と「ピープルマネジメント管理職」の二つに明確に分けてみてはどうだろうか。

一人は、マイスターのように業務の専門性を極め、事業の推進や高度な技術指導に特化するリーダー。もう一人は、人の気持ちに寄り添い、チーム内の人間関係の調整、モチベーション管理、ハラスメントやメンタル不調の予防といった「人」のマネジメントに専念するリーダー。

一人の人間に完璧を求めるのではなく、それぞれの得意分野を活かし、二人三脚で「管理職としての機能」を分担して担うのである。

もちろん、この新しい布陣を敷くことは簡単ではない。評価の仕組みから見直す必要があるし、組織に一時的な歪みが生じることもあるだろう。しかし、一人のスーパーマンの自己犠牲に依存する古い体制のままでは、いずれ企業の成長は一定のラインで確実に頭打ちになる。次なる成長に向けて、守りと攻めの体制を整える。今はまさに、その決断のタイミングなのだ。

「完璧な一人は探せない。しかし、機能するチームは創り出せる」

次代に会社を繋ぐために、これまでの「当たり前」を少しだけ手放してみる。そこから、強い組織への新しい一歩が始まる。

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