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布陣

現有勢力で「最強の布陣」を敷く。新しい評価のカタチ

黒子の手記

「評価面談の時期になると、どうも社内の空気が重くなる」

「一生懸命評価してもA(良い評価)とC(悪い評価)の人間はいつも一緒なんだよね」

先日、ある社長が評価シートの束を見つめながら、ぽつりとこぼした。

「できていない部分を指摘して、改善目標を立てさせる。昔から当たり前にやってきたはずなのに、なぜか社員のモチベーションが下がっている気がする」

必死に会社を強くしようとしている経営者ほど、この壁にぶつかる。限られた現有勢力で戦う中小企業にとって、社員一人ひとりの力を最大化し、攻めと守りの「布陣」を整えることは最重要課題である。それなのに、良かれと思ってやっている面談が、かえって組織の活力を削いでいるのだ。

その原因は、決して社長の熱意が足りないからでも、社員が怠けているからでもない。

「従来の評価制度が、『強みを活かした布陣を組む』ためではなく、『個人の弱みを指摘し、平均点を作らせる』ためのものになっている」ということだ。

私たちは学校教育の延長で、会社でも「足りないスキルを補うこと」を求めがちである。しかし、新たな優秀な人材を次々と採用できない中小企業は、個性とクセのある、今いるメンバーで戦い抜くしかない。それなのに、全社員を平均的な型にはめようと「弱み克服」に時間を奪われていては、激しい競争を勝ち抜く強固な組織体制など作れるはずがない。

A社は社員80名の医療機器専門商社である。中程度の営業成績を誇るX社員がいた。しかし彼は、事務作業や細かな報告書の提出が極めて苦手だった。従来の人事評価では、この「弱み」が厳しく指摘され、改善目標が課された。結果どうなったか。X社員は苦手な事務作業に時間を奪われ、顧客訪問の件数が激減し、営業成績は下から数えた方が早くなった。すっかり自信とやる気を失ってしまった。

この会社が状況を打破したきっかけは、「強みを見つけ活かすこと」「人事を科学する」アプローチへの転換だった。ギャラップ社の「ストレングスファインダー」を導入し、現有勢力全員の「強み」を客観的にあぶり出したのである。

結果として、会社はX社員に「数字や事務管理に強みを持つが、営業は苦手」なY社員をバディとして組ませた。X社員は得意な「開拓(攻め)」に専念し、Y社員は得意な「管理(守り)」でそれを支える。個人の弱みを無理に直すのではなく、社員同士の強みをパズルのように組み合わせ、会社として勝つための「布陣」を敷き直したのだ。X社員の目は再び輝きを取り戻し、業績は過去最高を記録した。

エンゲージメント(会社への貢献意欲)は、自分の弱みを指摘され続けている時には決して高まらない。「自分の強みがこのチームの『陣形』に不可欠なのだ」と実感できたとき、初めて社員の目に本気の火が宿る。

完璧な人間などいない。だからこそ、限られた現有勢力の才能を科学的に見つけ出し、最強の組み合わせを考える。評価制度とは、社員の欠点を探すためのものではなく、自社を勝利に導く「最適な布陣」を練り上げるための戦略会議であるべきだ。社員の弱みを直したときではなく、強みを解き放ち、最強の陣形を組んだとき、組織は最も強く前進する。中小企業には大手企業のように適性の幅の広い、なんでもこなせる人材は来ない、適材適所で、クセや個性を活かして戦うほかない。強みを見つけ、活かす。これが人を大切にすることだ、ということだと確信する。

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