その銀行提案に要注意です
2026年5月に大阪地裁で判決が下された「M銀行が助言した組織再編スキームの否認事案」が話題となりました。過去・現在でクライアントが銀行からの提案を鵜呑みにしてしまい、経営的に窮地に陥った事例に複数遭遇しています。
ケース1
課題解決を装う「ビジネスマッチング」(人事評価システム・DXなど)
某人事評価システムの会社は標準化されたパッケージにもかかわらず、数百万円の報酬をとり、継続支援にも数十万円の報酬をとります。銀行は紹介するだけで、当該企業からの「紹介手数料」を継続的に獲得できます。自社の企業文化や現場の実態に合わないシステムを導入させられ、無駄なコストがかかるだけでなく、現場の運用負荷だけが跳ね上がるという「本末転倒」な事態が多発しています。 なぜ、そのような魅力的な紹介手数料が払えるかというと、コンサルティング費用をのっけてクライアントからとっているからです。
ケース2
巨額のコストとリスクを背負う「ホールディングス化・節税スキーム」
事業承継や節税を理由に、複雑な組織再編やホールディングス(持株会社)の設立を、銀行や系列のコンサルタントが提案してくるケースです。 節税目的で作られた不自然なスキームは、国税局から「過度な租税回避行為」として否認されるリスクがあります。冒頭の大阪地裁の事例はまさにこの典型事例です。私はこのような節税コンサルの契約書をいくつもみましたが、致命的な税務リスクがクライアント企業に丸投げされる構造になっています。 こんな感じで契約書がかかれていたりします。
「税務申告等の具体的な実務は、甲が選任した税理士等の専門家が自己の責任において遂行するものとし、乙はその内容について一切の責任を負わない。」
要するに、節税コンサルの本音は、「私たちはあくまで『アドバイス』をしただけです。実際の税務申告書を作って署名捺印したのは、あなたの顧問税理士(あるいは私たちが紹介した提携税理士)です。責任を問うなら、申告書にサインしたその税理士に言ってください。 」です。
ケース3
仕組みが複雑な金融商品(例:為替デリバティブ)
昔、銀行がサッパリ儲からないので、弊社のクライアントの多くに「為替デリバティブ」をすすめました。すすめている銀行員もその仕組みは理解していませんでした。しかし、これが恐ろしい商品で大損する可能性を秘めていたのです。実際、社長から深刻な面持ちで相談されたのは1件や2件ではないのです。
億単位の大損害が出たとき、某●●銀行の銀行員と社長とのやりとりの場にも参加しました。この社長は怒ることがあるのかな、と思われるような温厚な方でしたが、損失後の銀行員の態度に顔を真っ赤にしてその場でブチ切れたのです。
リスクが極めて高いデリバティブ商品で相場急変時に多額の損失が出ても、複雑な商品は「銀行側が絶対に損をしない(利益を先取りする)」ように緻密に設計されていることが大変勉強になったという思い出があります。
ケース4 401K
「先生、福利厚生のためにメインバンクから401K(企業型確定拠出年金)を提案されているけど、どうしようか?」という相談を受けます。401Kの導入自体は悪くないと思います。しかし、銀行経由で導入すると、会社も社員も金銭的に大きく損をするように思います。銀行経由での導入は、導入時の初期費用が高額なうえ、毎月の手数料が「社員1人あたり数百円+基本料数千円〜数万円」と割高に設定されているケースが大半です。 銀行のシステムを通すだけで、会社は「毎年数十万円〜数百万円の無駄な固定費」を払い続けることになります。
また、社員にも良いことがないです。銀行経由の場合、銀行の系列運用会社が作る、信託報酬が「年率1.0%〜2.0%」もする高コストなファンド(アクティブファンドやバランス型ファンド)ばかりが並ぶ傾向があります。銀行側が継続的に儲かる仕組みだからです。
余談ですが、社労士さん・税理士さん・コンサルさん経由で401Kを導入するのも、彼らが「中間マージン」を継続的・永久的にもっていくストックビジネス構造がありますので、注意が必要です。
ケース5 手数料と融資の二重取りを狙う「借入過多企業のM&A」
自社の身の丈に合わない、あるいは相手企業が借入過多であるにもかかわらず、銀行がM&Aによる買収を強く勧めてくるケースです。 M&Aにより、高額な「M&A仲介手数料」の獲得と、買収資金の「新規融資」による貸出残高の増加が見込めます。シナジー効果の薄い買収により、多額の簿外債務を引き受けてしまったり、自社本体の財務体質や資金繰りまで悪化させてしまう危険性があるのです。もちろん、M&A業者がもってくる案件も要注意です。売られるには売られる理由があります。これは銀行経由の話ではありませんが、昔、私のクライアントX社が、某M&A業者の強いすすめで、Y社の買収を提案されました。Y社の売上・利益は順調にのびていたので、X社の社長は前のめりでした。しかし、わざとかわかりませんが、某M&A業者はキャッシュフロー計算書やその推移の資料は出そうとしませんでした。こちらが求めてやっと出てきました。Y社は資金繰りがきわめて悪い会社だったのです。買収していたら大変でした。基本合意の後でしたが、踏みとどまったのです。
最後に、銀行の提案がなんでもダメだということを言いたいのではありません。どうか皆さん、信頼のおける「セカンドオピニオン」をつけてください。福田事務所では「その提案書」を送っていただければ「意見書」を書きます。