社内不倫なのにセクハラ?組織を揺るがす「公私」の歪み
「福田さん、信じられへんわ……。うちの会社がセクハラで訴えられた。でもね、これ、どう見てもただのW不倫なんよ。もう、いいかげんにしてほしいわ!?」
ある日、社長と総務部長は怒りと困惑で震えていた。冷静な社長らをここまで動揺させたのは、営業部の上司と女性社員の「親密すぎる関係」だった。
お互い既婚者同士の社内不倫。始まりは、気軽な飲み会や、業務連絡の延長で始めたSNSでのやり取りだったようだ。しかし、それが女性のスマートフォンを見たご主人にバレた瞬間、事態は一変する。
追い詰められた彼女は、なんと「セクハラを受けて断れなかった」と嘘の言い訳をする。怒り狂ったご主人は弁護士を立て、上司個人と会社を相手取り、慰謝料を求める訴訟を起こしたのだ。
裁判ではあらゆる証拠が白日の下に晒される。彼女の主張に対し、上司側からは旅行の写真や、甘いLINEが次々と提出された。法廷で赤裸々なメッセージが明らかにされる――彼女にとっては、まさに「公開処刑」のような屈辱的な時間だったはずだ。
次々と突きつけられる決定的な証拠を前に、勝ち目がないと悟ったのだろう。あるいは、これ以上、公の場で恥を晒し続けたくなかったのかもしれない。裁判の途中で、ついに向こうも折れ、最終的には和解という形で決着することとなった。
実質的には会社側の主張が通った形での和解ではあったが、残ったのは、女性側の離婚危機、適応障害のメンタル疾患→休職→退職、傷ついた自尊心、男性側は周囲の冷ややかな視線や奥さんにもバレて、最終的に退職に至る、という、なんともあまりにも重く、そして恥ずかしい代償だけだった。
事態はひとまず収束した。しかし、社長の表情は晴れない。
「形としては終わったけれど、ダメージあるわ~。一定期間、もやもやして俺のエネルギーも完全に奪われてしまった……」
今回のように、会社の飲み会やSNSが引き金になるケースは非常に増えている。「ただの交流だから」という油断が、いつの間にか不倫の温床になってしまうのである。
そして、私のこれまでの経験から確信していることがある。それは、こうした問題が起きてしまう会社と、そうでない会社には、明確な「組織風土の違い」があるということだ。
問題が起きやすい会社には、公私(プライベートと仕事)の境界線が曖昧で、小さなルール違反やマナーの乱れを見て見ぬふりをする「なぁなぁの空気」が漂っている。こういう会社の特徴は一見、アットホーム、仲が良いというように見える。この緩い風土こそが、個人の倫理観を麻痺させ、歪みを大きくする最大の原因なのだ。逆に、規律が守られている会社では、そもそもこうした問題は芽のうちに摘まれる。
解決の方向性は、起きてしまった不倫をただ糾弾することではなく、「公私を厳格に区別するメッセージと、毅然とした仕組み」を日頃から社内に示しておくことだ。
就業規則の整備はもちろん、飲み会のあり方を見直したり、SNSの使い方に一定のモラルを求めたりしながら、「職場はプロフェッショナルが成果を出す場所である」という一線を、社長自らの言葉で発信し、健全な風土を育てる必要がある。職場の緩みは、個人の倫理の緩みを誘い、やがて会社全体の土台を揺るがす。
でも、あいかわらず、社内不倫問題の相談は毎年あります・・。