インフレ時代をゴキブリ経営で生き残ろう

輸入物価指数2022年4月 前年同月比44.6%上昇

2022年5月16日 日銀発表の輸入物価指数が、前年比44.6%に上昇した。これが企業物価に波及してくると、事業継続に重大な影響がある。企業の利益は、月を追うごとになくなっていくだろう。  

値上げが難しい? ここが変だよ日本経済

「先生、多くの中小運送会社はとても苦しいですが、荷主に運賃アップを要請できないんです。この業界の慣習のようなもんなんですよ・・・。」

運送会社のクライアントがため息交じりでおっしゃる。

一方で、ドライバーは人手不足、人件費が上がり、ガソリン代が上がっている。おまけに労基法改正により、働き方改革(まもなく猶予期間が終わり労働時間の上限規制開始)も求められている。荷主からは、QCD(品質・納期・価格)は変えずにちゃんとしなさい、と言われる。はっきり言っておかしい。中小運送業にはあまりにも理不尽である。大手企業や力のある会社はずるいと思う。自分たちは顧客に値上げはしているが、中小運送会社の値上げ要請は無視する。SDGsとか標榜する名だたる大手企業である。

なぜ、これだけ赤字の運送業が、バタバタ潰れないのか。それはお金がまわっているからだ。つまり、本来なら潰れるべき会社がゾンビのように生き残っている。だから、新陳代謝が進まず、値段が上がらない(上げられない)。でも、こんなことでは日本経済は立ち行かない。  

中小企業はゴキブリに学ぶ

私はゴキブリが大嫌いだ。異様な生命力、スピード、繁殖力、するどい触覚。

学生時代に激安の一軒家を学生4人で間借りしていた。私は台所の横の一階の部屋で寝泊まりしていた。だから、ゴキブリが部屋にワンサカ入ってきて、顔とか腹とかにのぼってた。口の中に入ったこともある。今考えると、よくあんなところに住んでいたと思う。

それにしても、ゴキブリは感心するくらい しぶとい。私は彼らと数多くの戦いを繰り返してきたが、敵ながら あっぱれだった。どんなことがあっても生き残り続ける。いま中小企業に必要なのは、この嫌われてもいいから生き残る「しぶとさ」である。日本の経済環境は必ず激変する。その荒波を乗り越えるためには「しぶとさ」「強かさ」「変化をキャッチする感度とスピード」がいる。  

インフレについていかないと命とりになる

15%のインフレの中で、大変なのは原材料等の値上げである。原材料・ガソリンの値上げには必ずついていかなければならない。ついていかないと絶対に行き詰まる。顧客に遠慮すると命取りになる。半年後は30%のインフレになっている。いきなり「30%値上げしてくれ」は言いにくい。いや、原材料によっては、1年後は50%のインフレになっているかもしれない。日本だけは金利を上げられないので円安はもっとすすむので覚悟がいる。

原材料が10%値上げになった時点で「値上げ通告」を出す。はい明日からー、というわけにはいかないから、2週間程度の猶予を与える。

契約は切れるかもしれないが、長期的に赤字で販売するよりもいい。

これをするにはやはり、固定費・損益分岐点を下げておく、いつでも変化できるように身軽にしておかなければならない。人の雇用、設備投資、慎重すぎるほどの考慮が必要である。また、倒れる「土俵際」ではできないので、顧客の選別は早め早めにやる。

会社を守り、雇用を守るために、勇気をもって事にあたろう。ゴキブリ経営とは、するどい触覚でこれから起こる事態を感度よく予測し、見栄やメンツにこだわらず、何があっても生き残って見せる覚悟の経営といえる。  

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