賃金を上げたければもっと働きなさい

日本の年間平均総労働時間は2割短縮された

第一次働き方改革、つまり、平成29年3月28日の働き方改革実行計画が、この令和6年3月末でいよいよ計画が終了します。その目玉はなんと言っても、労働時間の上限規制、年次有給休暇の強制付与でした。この計画とは別に、育児休業法改正による男性の育児休業取得率の急上昇も見逃せません。これにより、結果として起こったことは単なる時短です。要するに労働投入量の大幅削減なのです。日本はこの30年間、1人当たりの賃金は上がりませんでした。実はこの間、米国等の労働時間は変わりませんが、日本の年間平均総労働時間は2割程度短縮されたのです。週40時間制の導入も大きかったですね。さらに日本は働き方改革ではずみをつけて、時間短縮の道にひた走っているように思います。でも、かわいそうにその分、大手企業も含めて「管理職」と言われる人の労働時間は増加傾向にあるのです。

第二次働き方改革が目指すもの

第二次働き方改革が掲げられています。中身は「リスキリングによる能力支援向上」、「職務給の導入」、「労働移動の円滑化」による三位一体の労働市場改革だそうです。それにより、働き方の多様化・柔軟化によりエンゲージメントを高め、企業の価値創造を強化すると言っています。第一次働き方改革は、労働投入量の削減という結果をもたらしましたが、第二次働き方改革では、労働の質の向上を目指すようです。エンゲージメントとは要するに、会社のために頑張ろうという貢献意欲ですね。

ゼニの匂いがしない

私は、毎日、毎日、中小企業経営者と向き合って儲かる会社づくりを追い求めています。リスキリング、職務給、労働移動、エンゲージメント・・良さそうな言葉が並んでいますが、その効果は果たしてどのようなものになるのか、ピンときません。ゼニの匂い、儲かる匂いがしないのです。つまり、空理空論に聞こえるのです。いま日本が直面しているのは「労働投入量」が少なすぎることです。外国人(家族も連れてこれる特定技能の大幅拡充)を推進するしか道は無い状況です。実質的な移民受け入れです。労働投入量が増えない限り、GDPも増えないのです。要するに、労働時間が減った、休みが増えた、その結果、労働投入量が激減しますが、それをカバーする生産性向上という魔法の杖はそう見つからないのです。いま本当に必要なのは、労働投入量の増加ではないかと思っています。賃上げ、賃上げ、掛け声で上がるものではないのです。

中小企業は残業してナンボ

大手企業の社員は定時に帰る。中小企業の社員も同様に定時に帰る。そんなことでいいのでしょうか。過労死基準の残業、健康を害するような残業は論外ですが、1日1.5時間~2時間の残業をして、残業代をもらって月々の食える賃金が稼げるというのが、多くの中小・零細企業の現実ではないかと思います。

自分の城は自分で守る

第一次働き方改革で時短が進みました。私は社会保険労務士事務所を経営していますので、お客様の労働時間が確かに減っていることが手にとるようにわかります。第二次働き方改革では「働き方の多様化・柔軟化」をさらに進めようとしています。そして、官製昇給とも言えるような政府と経団連の人たちがまるでワンチームになって、賃上げ、賃上げと叫んでいます。この流れにのって、無理して賃上げし、時短し、休日を増やし、副業を認め、いつでも、どこでも働けるような柔軟な職場にすると、中小企業は潰れるでしょう。賃上げをしたければ、社長が儲かる仕組みをつくり、全社一丸となって、労働投入量を増やすことなのです。さもないと、中小企業の賞与はここ数年で、寸志程度又はゼロになっていくでしょう。地に足をつけて自分の城は自分で守る、この覚悟で望みたいものです。

「賃金を上げたければ、休みすぎるな!日本人」

以上、知恵がないので長時間労働・ハードワークで道を切り開いてきた昭和のおじさんの戯言でした。

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