若手が定着しません。どうしたら良いですか?

(使いやすい理論)

人出不足、特に若くて元気な働き手は足らない。多くの中堅・中小企業が採用に困っている。採用に困っている原因は定着に困っている。育ったと思ったら人が辞めるのだ。だから年中人出不足。   人事系の理屈理論はヤマのようにあるけれど、簡単に理解できて、使えるのものの一つにERG理論(クレイトン・アルダファー)がある。これはマズローの欲求5段階説よりわかりやすく実務上、使い安い。  

  • Existence(生存欲求):食べ物や安全住環境などを求める欲求。賃金、労働時間、休日などの労働条件全般があてはまる。
  • Relatedness(関係欲求):良好な関係を築き、認めてもらいたいという欲求。
  • Growth(成長欲求):自分の能力を上げ、苦手を克服し、創造的、生産的でありたい、さらなる可能性を追求したいという欲求。

  私は給与などの労働条件の部分、つまり生存欲求まわりについてアドバイスをさせて戴く機会が多い。しかし、この部分につき、一定レベルの企業間では大きな格差はみられない。   経営者の皆様は給与のことは気にされるが、目に見えない、見えにくい、「関係欲求」、「成長欲求」についての施策はほとんど意識されていないケースがあり、もったいない企業が多い。若い人に対して「関係欲求」「成長欲求」などを満たす施策を経営陣・現場の管理監督層がどれだけ意識し、行動できているか、はもっともっと問われてもいい。  

(使いやすい社員アンケート)

米国にギャラップ社という人事系の調査会社がある。以下の指標で高得点がつく職場は業績の良い職場であることを調べ上げた。  


Q1:職場で自分が何を期待されているのかを知っている
Q2:仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
Q3:職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
Q4:この1週間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
Q5:上司または職場の誰かが、自分を一人の人間として気にかけてくれている
Q6:職場の誰かが自分の成長を促してくれる
Q7:職場で自分の意見が尊重されているようだ
Q8:会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
Q9:職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
Q10:職場に親友がいる
Q11:この6カ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
Q12:この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった

・完全に当てはまる(5点)
・やや当てはまる(4点)
・どちらともいえない(3点)
・やや当てはまらない(2点)S
・完全に当てはまらない(1点)  

「生存欲求」はもちろん大切だが、上記の質問に給与や労働条件は入っていない。いかに「関係欲求」「成長欲求」が社員の生産性・定着を高めるかの証左である。

「関係欲求」「成長欲求」という根源的欲求を満たすことを意識するのは効果が絶大である。そして、なんと、カネがかからないというおまけまでついている。    

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