社員のクセを活かす中小企業の採用戦略

1 これからまた人手不足は深刻になる

コロナ禍においても製造業が徐々に復活し、既に人手不足である。おそらく、飲食・サービス業が復活すれば、従来通りの人手不足の状況となる。特に中小・零細企業は採用活動が難しくなるだろう。

テマがかかり、泥臭く、めんどうなことをやりきる人が圧倒的に不足している。または、そんな人材がいたとしてもその人たちの高齢化が著しくなっている。

採用定着にテマヒマを掛けざるを得なくなっている。  

2 人間は客観的に自分がわからないことが多い

中小企業は採用時に多くの候補者がいるわけではないので選ぶ立場にない。経理をやりたい、SEをやりたい、介護をやりたい・・。本人の希望はそうだとしてもやらせてみたらサッパリということが多い。やる気はありそうなので、また時には経験があるというので、任せてみたくなるのだが、入社して2週間もたてば上達する見込みもないことがわかる。

中高年になっても、自分の適性をわかっていない人も多い。だから、採用時に適性検査なるものをやるが、この適性検査は「自分が認識している自分」、「そうでありたい自分」がどうしても出てくる。ここが難しい。でも、適性検査はやるべきだ。  

3 中小企業にやってくる人の適性の幅はせまい

中小企業にやってくる人は、営業はできるが、緻密な計算や作業はサッパリダメ、又は計算はできるが対人コミュニケーションが苦手など、一長一短という言葉がまさにあてはまる。こんな私も適性の幅がせまく、とても偏っている。だから、大手企業ではやっていけなかった(もちろん能力全般の問題ですが・・)。

一言で言えば、中小企業の社員はクセがあるのだ。有名な宮大工の故・西岡常一さんは「クセは力なり」と言っていた。クセは悪くない。むしろプラスだ。クセを活かすことで、力強い組織ができるからだ。中小企業はクセのある人を適性配置し、それらを組み合わせ、やりくりするほか道ははない。

よくジョブ型雇用に転換すべきだと言わるが、それは大手の話。中小企業はもともとジョブ型雇用だ。適性の幅がせまいので、出来る仕事が限られている。中小企業はもともと社長が適材適所で職務が固定化・専門化し、能率をあげている。これは「中小企業版ジョブ型雇用」といえる。  

4 自社で活躍する人の適性・特徴を知る

「どこへ行っても優秀と評価される人」、そんな人は中小企業には入ってくれない。面接にも来ないかもしれない。逆にその人が入っても「土壌」があわないので定着が難しい。中小企業は「どこに行っても優秀と評価される人」を求めてすぎてはいけない

そうではなく、まずは自社で活躍する人の適性(その人のクセ)を知ることだ。自社の既存社員もどこへ行っても優秀とされる社員ばかりいないはずだ。でも、活躍している現実がある。だから、まず適性検査を使って、自社の高業績社員と伸び悩み社員・すぐ辞めた社員の特徴について、価値観を含め明らかにすることだ。  

5 適性検査の長所と限界を知り、面接に活かそう

適性検査を必ずやるも、その適性検査の特徴、つまり、その適性検査の長所と限界をしっかりとわかって使う必要がある。

まず、事前に自社で活躍する人(部署・職場・職務を特定)の適性を分析する。自社で活躍する人の適性の特徴を知ったら、採用候補者の適性検査の精度がグンとあがる。もちろん、どんな適性検査も限界がある。だから、履歴書・職務経歴書そして面接時の質問で具体的に確認することが必要だ。面接では自社のファンになってもらう「引き付ける」ことが必要である。一方で本当に自社(その部署・職場)で活躍できるかを「見抜く」ことも要求される高度な技術が試される場と言える。

科学的な適性検査を入口にして、面接→適性配置→離職防止・動機付け・・、偶然の結果に頼る人事活動から、必然の結果を出す人事活動。人手不足の時代において中小企業でも限られた人を活かす仕組みの改善が求められると思う。

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