2025年 労務事情を振り返る 2025 12/16 労務&法務 募集・採用 教育・指導 社長のQ&A 組織づくり 評価・給与 2025年12月16日今年も終わりを迎えます。おかげさまで良いご縁に恵まれ、日本全国の中堅・中小企業様をご支援する機会をいただきました。福田事務所のクライアントは、年商10億円~数百億円規模、従業員100名以上の企業様が中心です。一方で、業種業態にもよりますが、従業員数30名未満の企業様では、人件費・採用・資金繰りの複合要因で厳しさが増している印象があります。その1 物価上昇による生活負担増 → 賃上げ要請の切実化物価上昇を背景に、処遇改善の要望がより具体的・切実になっています。昇給・賞与の説明責任、賃金制度の見える化、運用の公平性など、制度改定と運用改善のご相談が増えました。日本全体・中流と呼ばれる層が貧しくなっています。ある企業の社員さんは、奥さんから「もっと残業をして残業代を稼いでこい」と言われていてムダな残業をしている、と相談がありました。副業で稼ぎたいという相談も多いです。物価動向を踏まえると、このテーマは来年も継続する見込みです。その2 最賃・初任給引き上げに伴う賃金テーブルの再設計純粋なベースアップが難しい中、若手層に配分を寄せた調整が増えています。調整を重ねるほど賃金テーブル全体の整合性が崩れやすく、等級・評価・昇給ルールを含めた再設計が必要になるケースが目立ちました。この動きに呼応して、賞与の一部を月例給へ移す動きがみられます。採用競争の激化を背景に、賞与の一部を月例給に振り替えます(年収を維持しつつ月給を厚くする)。新卒採用市場の変化に合わせ、賃金配分の見直しが進んでいます。イメージは、4ヶ月分の賞与を3ヶ月分にして、1ヶ月分は月給化するというものです。その3 人手不足領域はさらに採用難に特に現場系・技能系など一部領域では、採用難が深刻化しています。待遇改善を進める企業がある一方、採用そのものが成立しにくい地域・職種では、外国人雇用(特定技能、留学生等を含む)を検討・導入する動きが加速しています。その4 労働者側・労組の“AI活用”で反論書面が高度化労使双方でAI活用が進み、会社制度の矛盾点の指摘や文面チェック、意見書の作成などが、以前より短時間で行われる傾向があります。会社側も、説明資料や根拠整理をより丁寧に行う必要性が増しています。その5 人事給与コンサルは「自走+伴走」ニーズが拡大いわゆる成功モデルの“型”をそのまま当てはめても、組織文化や歴史、経営陣と社員の関係性などの暗黙知が大きく、しっくり来ないケースが少なくありません。また大手企業では、外部コンサルのアウトプットが画一的に見え、内製化・自社主導へ舵を切る流れもあります。結果として、クライアント側が主導しつつ、要所で専門家が伴走し、詰まるポイントを解きほぐす支援形態へのニーズが高まっています。その方がコスト面でも安いからです。その6 試用期間中の早期離職・解雇相談の増加人手不足の影響で採用の間口が広がり、入社後早期にミスマッチが顕在化するケースが増えました。試用期間運用(評価基準、指導記録、説明、手続)を整える重要性が一段と高まっています。その7 ハラスメント相談の増加(グレーゾーン対応の重要性)違法性の有無とは別に、「不適切な言動」と受け取られうる場面への対応が求められ、管理職向けのコミュニケーション・指導方法の研修ニーズが増えました。昨今、純粋なパワハラと認定されるような事実は少なく、「不適切な言動」「不適切なマネジメント」に対して、「パワハラだ」という声が起こりやすくなっています。採用ミスマッチが増えることで、現場負荷が上がり、結果として問題化するケースも見られます。セクハラについては、50代・60代・70代の「不適切にもほどがある」社員が、時代の感覚についていけずに、セクハラになるケースはまだまだ多いです。その8 メンタルヘルス対応の相談が増加既往歴のある方を含め、配慮が必要なケースの相談が増えています。個別事情の影響が大きく、採用・配置・業務設計・再発予防(産業保健、面談、業務量調整、復職支援)を含めた仕組みづくりが重要です。既往歴のある方の再発可能性も高く、良い人物だと思っても労務的に難しい局面が多々あります。その9 外国人雇用の相談が増加(制度理解と運用がカギ)主な在留資格として「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」などがあり、要件や実務運用の理解不足がトラブルの原因になります。「特定技能」は、受入れ機関(企業)としての責務や影響が大きく、雇用終了の判断や手続は慎重な設計が必要です。「技人国(技術・人文知識・国際業務)」では、業務内容が要件に適合しているか(単純作業中心になっていないか)を点検し、更新や調査対応のリスクを下げる運用が重要です。また安全衛生面では、重大労災発生時のリスクが大きいため、教育・ルール・記録整備を含めた体制づくりが不可欠となっています。その10 事業承継・高齢化対策(意図して仕組む)社長等の事業承継問題も深刻ですが、次代の管理者・現場リーダーの育成が追いついておらず、社内がますます高齢化しています。どのように幹部・管理者を育てていくか、既存の幹部・管理者へ円滑に承継していくか、どこも頭を悩ませています。意図して取り組まなければ、いつのまにか10年が経過し、中小企業では70代の管理職ばかりというのも珍しくなくなるでしょう。 複雑案件・高度案件、セカンドオピニオンのご相談も歓迎しています。オンラインで全国対応可能です。中小企業の経営を後方より強く支援してまいります。来年も何卒よろしくお願いいたします。 労務&法務 募集・採用 教育・指導 社長のQ&A 組織づくり 評価・給与