メンタルヘルス問題急増!診断書に隠された秘密

入社してすぐに診断書が出て長期欠勤

 応募して戴いた方で、真面目で良さそうな人物を採用した。しかし、直ちに遅刻、欠勤が目立ち、そのうち会社に来なくなった。そうこうしているうちに診断書が出てきた。まだ試用期間中である。こういう相談がとても増えています。健康問題、特にメンタルヘルス問題は、労務問題の中核になりつつあります。診断名は主に3つ。多くは「適応障害」「うつ状態」ごくたまに「うつ病」です。この診断書提出の数は、今後益々増えると思います。

「適応障害」って病気なの?

 文科省の2023年度調査では、子供の数は減っているにもかかわらず、小中学校の不登校は約34.6万人で過去最多。増加は11年連続といいます。適応障害というのは実は、大人の不登校に近いと言われています。不登校は学校に行きたいが行けない、会社に出勤したいが出勤できないのと同じです。この適応障害は、仕事や会社に対してのみ”うつ状態“になるだけで、家族との会話や趣味などでは普通に過ごすことができます。男性は仕事で力を発揮できない、女性は人間関係の葛藤で、適応障害になる傾向が強いとみています。

「うつ状態」とは?

 「うつ状態」という診断は、実は上記の「適応障害」であることが多いと言われています。ただし、心療内科の先生もこの診断書上の「病名」にはそれほどこだわっておられないようで、たとえば、患者から「適応障害という診断名では、職場に適応できないのは自分の責任のように思われるので、違う病名を書いてください」と言われます。そうすると心療内科の先生は「うつ状態」という診断書を書くようです。

 入社してすぐに出てくる診断書は、「適応障害」「うつ状態」が多いように思います。一言で「うつ状態」といっても、実は職場不適応に起因する「適応障害」であったり、本当は(ずっと前から)「うつ病」であったりするように思います。

「うつ病」とは?

 私の親族にも、うつ病に罹患し、今はおかげ様で寛解した者がいます。うつ病は、罹患した方や家族にしかわからない、とても深刻かつ辛い病気です。「うつ病」というのは「うつ状態」と全く違います。「うつ病」になる前に、本人だけでなく、家族、会社で全力で食い止める必要があります。というのは、うつ病はなかなか治らないからです。軽いうつ病でも、最低でも3ヶ月、普通なら1年~2年は仕事を離れて休職することを余儀なくされます。そして、うつ病は6割から7割以上の人が再発するのです。ひどい場合、精神障害を負ってしまいます。心の病気というのは厄介です。心療内科の先生もわからないことのほうが多いのではないかという気がいたします。長期間の治療が必要で、心療内科の先生もいろんな薬を試しながら、本人の意向・悩みを聞きながら、試し、試し、手を替え品を替えアプローチされているように見えます。それだけ心の病は難しいのです。ただし、うつ病にも2種類あります。それは旧型うつ病と新型うつ病です。旧型うつ病は明らかに顔つきがしんどそうですが、新型うつ病はパッと見は病気とはわかりません。新型うつ病は昨日まで普通に接していたのに、突然休みはじめる、気分のいい日とそうでない日の浮き沈みが激しいなどの特徴があります。

診断書は絶対、でもその診断書が不可解

 会社は、医師の診断書の記載を無視して雇用を継続していて、社員の病気が増悪し、最悪の場合、障害状態になったり、死を選んでしまった場合、取り返しのつかない重大な安全配慮義務違反となってしまいます。法的なエビデンスとしても診断書は最強です。しかし、その診断書は、私達素人にとっては謎が多く、不可解そのものです。たとえば、医師は常に、職場復帰を早期に果たしたいという患者の利益を考え、「就労可能」と「就業可能」を使い分けています。「就労可能」とは、会社に出勤して、なんとか作業を中心とした労働はできるが、通常業務ができるかどうか、主治医はわからないという立場なのです。したがって、会社は、通常業務とはどのようなものかを主治医に説明し、通常業務ができるかどうか、通常業務をさせるにあたって、どのような安全配慮義務を果たせばいいのか、めんどうがらずに必ず主治医にアクセスして情報を具体的にとらないといけないのです。できれば、本人同席の場面と、本人に席を外してもらう面談の場面があれば尚良しです。したがって、休職に入る前に主治医のアクセスについて本人に同意を得ておくべきでしょう。

目次