転職サイトの悪意のある書き込みへの対応

デジタルタトゥー

 ネット上に、将来の自分にとって不利益な情報が残り続けてしまうことを、デジタルタトゥーという。簡単には消えないのだ。

 これは会社に対しても、妥当する。5年前、長時間労働やハラスメントが起こっていた職場で、今は改善されていても、転職サイトに記載された悪い口コミはなかなか消せないのだ。

 中小オーナー企業ほど、その人物が特定されてしまい、完全な人権侵害の内容も多い。匿名でかつその会社が嫌で辞めた人が記載するのだから、それは捌け口としてひどい内容となる。

社長は意外と知らないが・・

 少し前だが、結構書き込みが多い中堅企業のクライアントの転職サイトの口コミを調べて、PDFにしてその会社の社長に送らせていただいたことがある。社長や幹部の方は意外とご存知でないものだ。

 非常にムカつく内容、人権侵害、名誉毀損もはなはだしいものをピックアップしたので、社長は怒り心頭であった。

 私は社長に定期的に記載内容を調査して、しかるべき対応をとって下さい、と申し上げた。

 なぜなら、採用活動にかなり不利になるからだ。内定を出しても断られることが多くなったら、転職サイトを調査すべきだ。

しかるべき対応とは?

 しかるべき対応とは、人権侵害や虚偽の内容などを疎明して、転職サイト側に消去を求めることである。それでも消えないようであれば、弁護士さんを立てて削除請求、発信者情報開示などを行うこともある。

 私のクライアントのX社は、ひどい書き込みの内容であったので、削除請求だけでなく、損害賠償請求をするために、発信者情報の開示請求を裁判所を通じて行った。発覚したことは、書き込みを行った人物は、ライバル会社の社長の兄弟(元役員)であったということもあった。

良い書き込みを増やしなさい

 実は、合理的な疎明のうえ請求しても、無視されたり、抵抗されたりして、転職サイト側が削除請求に応じないことも多い。また、弁護士さんを立てて、法的な削除請求・発信者情報開示・損害賠償請求・・などすることがあるが、時間、カネ、労力がかかる。会社はいつでもファイティングポーズをとる、つまり、虚偽の内容、名誉を毀損する内容があれば法的措置も辞さないという姿勢は大切だが、限界がある。

 手っ取り早い方法として、逆に在職者、円満に退職する人に、会社の「真実」を書き込んでもらったら良い。記載内容を強制したり、在職者なのに、退職者だと偽って書き込むと問題があるが、「真実」を反映させるために協力をお願いするのだ。

 転職サイトの難点は、「匿名」で会社に恨みをもって「辞める人の不満の捌け口」のようになっていることである。

 会社というのは何らかの魅力があることで成り立っており、だからこそ在職者はその会社で働いている。その在職者の意見こそ取り上げられなければならない。これだけネット社会になれば、この対応は採用対策として欠かせない。

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