2022年10月 週20時間以上勤務者の社会保険加入に備えよう

人手不足下でパートさんがこぞって就労制限

2022年10月半ば。

100人いるパートさんのうち5名から退職の申し出があった。また、10名から勤務時間を減らしたいと申し出があった。  

聞くところによると、「総務部長からいきなり社会保険に加入を言われたが、手取りが減るので加入したくない」「扶養の範囲で働きたい」ということだった。ある人は「社会保険非加入でダブルワークをする」という。

現場の長は「ただでさえ人手不足なのに、いまパートさんに辞められたり、勤務時間を減らされると困る、なんとかならないのか!」と総務部長に詰め寄った。

翌月の11月、慌てた総務部長は、パートさんたちを集めて社会保険や税金の説明会を行うことにした。しかし、「それならもっと早く説明してほしかった」「社会保険のない次の職場をもう決めている」「説明を聞いたが意味がわからない」「結局、どうするのが得なのか、サッパリわからない」などなどの不満の声が次々とあがった。  

2022年10月 週20時間以上勤務者に社会保険適用拡大

社会保険の加入が、週20時間以上勤務者まで適用拡大される。現在は、従業員数501人以上の企業が対象だが、2022年10月以降は従業員数101人以上、2024年10月以降は従業員数51人以上の企業が対象となる。なお、この「従業員数」は原則としてフルタイム従業員だが、週所定労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数も含めた人数をいう。  

上記の企業において新たな加入対象者は以下のすべての要件を満たす従業員である。
□ 週所定労働時間数が20時間以上
□ 月額賃金が8.8万円以上(残業代、精勤皆勤手当、通勤手当等は含まれない)
□ 2月を超える雇用見込みがある
□ 学生ではない

上記の要件を満たす企業の対象従業員は、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入を余儀なくされる。

多くのパートさん(大半が女性)は家庭との両立が一番で、その範囲でいかに時間を有効活用して稼ぐかを考える。一方で、社会保険・税金、夫の家族手当まで考えると、極めて複雑な意思決定となる。そうすると、もうめんどうなので、ヘタに勤務時間を長く働くより、時間を短縮して社会保険加入を回避し、扶養の範囲で働こうとする人が出ても全くおかしくない。

現に、既に適用が始まっている大企業(501人以上)において、適用拡大当時には、勤務時間を増やすパートと勤務時間を減らすパートが半々くらい発生したという経験則がある。  

パートさんに事前に選択肢を!

早めにパートさんに説明すべきだ。同時にパートさんに働き方の意向を確認する。面談やアンケートを駆使して、「働き方を選択」できるように配慮する。パートさんに定着してほしければ、会社は、どうやったら働く人が望む働き方で最大限の収入が得られるかを協議しなければならない。特に、全国展開している会社は最低賃金なども異なるのでめんどうだ。

優秀なパートさんには勤務時間を伸ばし、社会保険に加入してもらって1日7時間などの「短時間正社員」「限定正社員」的にできるだけたくさん働いてもらうことを要請する。

逆に、能率面から考慮して、勤務時間が短くても良いかなという人は、次回の契約更新で時短の提案をすることとなるだろう。

勤務時間を減らすか、又は増やすか。増やすなら家庭との両立でどこまで増やせるか、その際、社会保険料を控除した手取りがどうなるか、これをアドバイスすることが欠かせない。

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