中小企業のハラスメント事情②(パワハラ編)

「〇〇課長のパワハラにはもう耐えられない。仕事がつらい。もう死にたい」

とのいう日記が残っており、不幸にも従業員の方が自殺に至った。

会社としても上司としても考えたくないことだが、ありえる時代だ。

パワハラの労働局の相談件数はグングン伸びており、相談内容の分類の第1位である。

中小企業においても、「これはパワハラだ!」という声が頻繁にあがっている。特に建設関連事業者に多い。医療機関、特に医師の世界でも多い。研修医などは人間扱いされない。

重大なミス、それも一歩間違えれば命を落としかねないミスを起こした者に対して、きつくしかり飛ばすことは当然だ。ミス等の程度ももちろんパワハラの認定で勘案される。建設業などは「一歩間違えれば命を落とす」という傾向は強いので、誤解も含めてパワハラだといわれてしまう頻度が高いのはうなづける。

しかし、よくもここまで・・、といえるほど裁判例などを紐解くと克明に上司の発言内容が出てくる。多くは携帯電話やICレコーダーで録音されている。録音による衝撃は輝かしいキャリアが台無しになった豊田議員のパワハラ事件が思い出される。パワハラか否かは、その「ストーリー」「文脈」によって判断されるべきで、断片的に判断されないものだが、証拠価値は大である。 本人が不幸にも自殺した場合でも、本人の日記、メモ、家族や友人に送ったメール、LINEその他発言などから、間接的に推認されることになる。

会社は、職場環境について、労働者の健康を害さないよう、また仕事をする上で人格の尊厳を傷つけられないよう、適切に保つ注意義務ある。

会社として、パワハラ、いじめを放置した場合には、安全配慮義務違反として、損害賠償義務を負う可能性がある。特に近年では、会社の安全配慮義務が厳格に解釈。「知らなかった」「聞いていなかった」という弁明が通用しないケースが多い。

簡単に「パワハラだ!」と言われる時代に会社として取るべき制度・システムがある。それは以下のようなものになる。

(その1) 

職場においてパワハラは許されず、パワハラをした者に対しては厳正に対処するという方針を明確に打ち出し、各労働者に周知・啓発する。

    →具体的には、就業規則の服務・懲戒規定の整備、管理職研修

(その2) 

労働者からの相談に対し、「相談窓口」をあらかじめ設置し、「相談窓口」の担当者が、適切柔軟に対応できるような体制を整備。

(その3) 

職場におけるパワハラが生じた場合において、その事案に関する事実関係を迅速かつ正確に把握し、適切に対処する。

上記の制度・システムがないこと自体が、安全配慮義務違反と評価されるリスクがある。

逆にいえば、これらの制度・システムの整備はパワハラを防止するのに有効であるばかりか、事案が生じたときに会社を守る抗弁になりうる。

今一度、貴社の制度・システムを見直すときである。

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