なぜ、社長は「シングルマザー手当」を出したくなるのか? 2022 10/03 労働法務 2021年9月30日2022年10月3日 シングルマザー手当 企業が人事給与問題に取り組むなかで、しばしば「シングルマザーに対して何等かの手当を出すべきではないか?」という問題提起がされることがある。 特に気になるが、非正規社員であるシングルマザーである。そんなに気になるなら、正社員登用したらどうかとなるがそう単純ではない。特に中堅以上の企業になると、非正規社員が多数いるので公平感を保ちながら、シングルマザーのみを正社員に登用するというのは極めて困難である。非正規社員をどんどん正社員に登用すると人件費がもたないこともある。 したがって、以下のような基準が導かれる。 非正規社員(社会保険加入)で、被扶養者としての子どもを有するシングルマザー。 金額は子ども1人につき5,000円~10,000円。 なぜ、この問題が起きてくるか? 一方、「シングルファーザー手当」を出したいという社長は今まで一人もいない。あくまでシングルマザーなのだ。役所から出る扶養手当も昔はシングルファーザーに冷たかった。「男は自分で稼げるでしょ(というか、稼げ!)」というのが日本の社会通念である。あくまで女性の賃金問題なのだ。 その背景には、非正規社員の大半が女性、日本の女性の賃金は国際社会から批判されるほど低いという現実がある。女性が独立して子どもを育てていくには、どうしても「非正規」という壁が立ちはだかるのだ。今よく言われる子どもの貧困問題にもつながる。 それと、離婚しても養育を払わない男性が極めて多い。養育費を継続的に受け取っているのはなんと4分の1程度だという。 覚悟が違うシングルマザー そして何より社長が強くその必要性を感じる事実がある。それはシングルマザーの働く覚悟やその姿勢だ。働くことに真剣で前向きなので、中小企業ではとても戦力になる。 やりたいことが見つからない、自分探しに熱心な20代の若者とは目つきが異なる。やるしかないのだ。 シングルマザーには仕事ができる、頼りになる人も多い。故に社長はその生活背景、正社員(男性)の働きと賃金を考えると不合理に感じ、「彼女はシングルか・・、もっと賃金を上げてやらないと!」と考え始める。 日本の賃金システムは男性を正社員として一家の大黒柱、年功で賃金を上げ、配偶者・子どもを含め食わす仕組みである。その分、非正規社員(女性)が割りを食っているのだ。初任給だけ上がって甘い、甘い20代の若者、口だけ達者で給料分働かないおじさんの影で懸命に働くシングルマザーの処遇改善を行う。悪くないと思う。システムの矛盾を解消する企業の社会貢献だ。 逆にシングルマザーを簡単に解雇はできない。私の経験ではシングルマザーは上記の事情故に、かなりの確率で労使紛争又はそれに準じる状態になったのだ。身に染みている。 労働法務