生産性向上 労働時間の圧縮付加法とは?

圧縮付加法とは、人、モノ、カネ、情報は圧縮せずに、入れ物、よくあるケースとして売場スペースだけ圧縮する方法だ。

小売店ならまず、品揃えの数は減らさず、スタッフも減らさない。これまでの売場スペースだけを圧縮することで、商品密度の高い店をつくる。しかし、従来のイメージの通り仕事をやる。変わるのはたとえば、従来100坪をフル活用していたが、60坪にするだけだ。

こうしても売上はまず下がらない。逆に上がることもある。仮に上がらないにしても、商品密度は1.67倍になり、販売員のカバーする売上は20%ぐらい上がっていく。これで店全体に成功体験、能力向上がみられ、自力がつく。その後、圧縮によって生じたスペースを利用し、そこに新しい商品を付加していくということだ。これにより労働生産性をあげていく。

これを労働時間に置き換えても、全く同様の効果を得ることができる。今まで100の時間でやっていた仕事を60の時間で”やらざるを得ない”ようにする。店の場合はハード面の変更なので明確かつ具体化できるが、労働時間の場合は習慣や意識でなかなか前に進まない。だから、ルールや仕組みで強制していく。このルールや仕組みの強制のやり方はいろいろな事例がある。私の労働時間短縮のご支援で最も成功するのはこの圧縮付加法だ。

業務を見直してから、労働時間が短縮するという例はあまりない。働く入れ物、つまり労働時間だけ従来の意識はそのままでいいから(スグには変わらないから)、やらざるを得ない仕組みでやらしてしまうと業務のやり方が変わる。最初は文句が出るが、半年1年も経てば、それが日常になる。

そして、圧縮することで空いた20の時間を新たな新規事業の取組みに向ける。いま日本のすべての業種業態がこのような労働生産性の向上をせまられているのだ。

昨今の風潮として、休日を増やせ、給与・賞与を上げよ、好きな仕事をさせよ、褒めて育てよ、パワハラになるから叱るな、教育機会を与えよ、時短せよ、育休は3年間取らせよ等々、労働者の権利拡大は歯止めなく続く。世界一高い賃金、超高齢化、1000兆円を超える借金を抱えるも、資源のない日本は勤勉性や知的ハードワークを軽くみたら、私たちの未来はない。従来のルーチンや手慣れた業務は常にリストラし、付加価値の高い仕事に挑戦する、このことによって、労働生産性を上げ、富を労使で勝ち取っていくしか道はないのだ。

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