店長・課長に残業代を払う時代に備えよう 2022 8/26 労働法務 2017年2月13日2022年8月26日 働き方改革、過重労働撲滅の議論がさかんである。これからは36協定の限度基準の遵守が必須となる。その延長戦上に待っていることがある。それは「名ばかり管理職」問題である。 良いか悪いかは別にして、今まで残業代を払わない対象であった「店長」や「課長」に残業代を払う時代がくる。これはもう避けようがない。なぜなら、これだけ長時間労働の抑制の議論が進めば、「そもそも課長や店長は労働時間規制の適用除外なのか」について、シビアな判断がされるに違いないからだ。 オーナー中小企業で労働時間の適用が除外される「管理監督者」は、役員のみ、100歩譲って、部長までと考えておくべきである。 (これではダメだという例) A社は小売業。A社のなかでも大型店の元・店長Bが訴えを起こした。Bの給与明細は以下のようになっていた 基本給 25万円 職務手当 5万円 役職手当10万円 合計 40万円 Bの訴えは、未払い残業代の請求であった。Bは平均して月間60時間の残業を行っていたので、以下の計算式で残業代を請求してきたのだ。 (基本給25万円+職務手当5万円+役職手当10万円)÷173時間×1.25倍×60H×24ヵ月分≒416万円+遅延利息+付加金(416万円) A社の賃金規程には以下のように記載があった。 「役職手当は残業代として支給する」 「職務手当は残業代として支給する」 会社の言い分としてはまずBは管理職だ。管理職でないとしても役職手当も職務手当も残業代だというものだ。 しかし、裁判所はこう言い放った。 「労基法上の管理監督者とは到底認められない。労働時間管理もなされておらず、超過分も払っていない。役職手当も職務手当も時間外労働手当としては認められない。40万円を基礎にして、2年分の未払い残業代の支払い義務がある」 A社はやむを得ず400万円で和解に応じることとなった。 (こうすべきであった) 福田事務所としての提案は以下である。定額残業手当はあくまで残業代支払い方法の例外である。例外であれば、その支払い方に細心の注意がいる。 基本給 25万円 役職手当 3万円 定額残業手当12万円(残業代 約60時間分) 合計 40万円 ポイント1 区分性 役職手当と定額残業手当を区分しておく。結果として、従来より「小さな役職手当」になる。 ポイント2 形式基準 残業代であれば、「定額残業手当」という名称にしておく ポイント3 実態として残業手当であったか 定額残業手当を超過した分は超過分を精算する、そのための労働時間管理体制になっていることが必要 ポイント4 定額残業手当と超過分の精算の合意 上記が就業規則、雇用契約書で合意されていることが必要 労働法務