労働時間実務の大転換に備えよう①

政府は2027年には時間外労働を行う場合でも月間45時間、年間360時間以内となることを目指している。つまり、現在許されている「特別条項」なるものを撤廃する予定だ。

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2018年7月に国会で成立した特別条項に関する改正法案では、

現行法では「限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る)」

とあるのに対し、

改正法では「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に3の限度を超えて労働させる必要がある場合」

となっている

つまり、改正法では「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等」でしか、特別条項(月間45時間超)は認めないことになった。

「通常予見することができない」とは、たとえばアイスクリーム製造会社で、567月が毎年、超繁忙期、売上の大半がこの期間に製造された製品で成り立っているとする。しかし、これらの事情は「当然に毎年予見されている」のだから、特別条項の締結は認められないことになる。行政や司法は現実的にどのように判断・運用するのかはさておき、立法上は特別条項を「殺した」にも等しい改正が行われたといえる。

これから7~8年以内に労働時間の分野は大きく転換していく。まず、現段階で特別条項(たとえば、年6回は月間45時間、年6回は月間70時間等)付の36協定を締結しているにもかかわらず、ビジネスモデル上、遵守できていないとする。そのようなビジネスモデルを前提としていたなら、会社はあと5年もすればもうやっていけなくなる。

これに関連する法改正もまさに着々と進んでいる。政府は財政再建のプライマリーバランスゼロなどの対策は、お題目だけでやる気がなく、何度も先送りしている。しかし、なぜか、働き方改革関連分野は現実的に誠に力強いスピードで推進している。

ある社長がおっしゃった。「人出不足なのに、こんなことが続けば、中小企業は潰れるね」。

その通り、働き方改革とは再編・淘汰を促す改革である。できない会社は潰れてもいい、若手を中心に働く者もそう思い始めている。

資産と売上をバランスさせ、回転を上げる、売上と費用をバランスさせ、収益をあげる、その前提として、労働時間をバランスさせないと先はなくなったのである。確定路線である。

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