中小企業は「短時間正社員制度」をつくろう

今まで女性の賃金が安すぎた

賃金のコンサルタントをして20年になる。しかし、この仕事は今後成り立つのか疑問がある。日々さまざまなご相談に応じているが、今までの考え方・やり方では限界を迎えつつある会社が誠に多い。力不足を痛感する。

昭和・平成の賃金コンサルタントの仕事は、「いかに賃金を上げるか?」を指導していれば飯が食えた。しかし、いま、多くの中小企業で賃金原資そのものの問題に直面している、つまり賃金アップを実現できる労働生産性アップが実現できていない。これが深刻である。

女性を中心としたパートが採れない。女性の多くは、正社員として勤務する、又は待遇の良い派遣の仕事でそれなりの賃金で勤務する人が多くなっているからだ。労働条件で中小零細企業は選別され、応募すらない。そして残念ながら今後も、応募がなく縮小均衡する会社が多発するだろう。

岸田総理は、男女の賃金格差の開示を大企業に義務付けると表明した。かねてより日本の男女格差は問題視されていた。

今までは女性の賃金が安すぎた。その分、経営者は楽して利益を得ていたと言える。しかし、今後はそれが通用しないと断言できる。今後は若手の賃金上昇に加えて、女性の賃金アップ戦略が労務政策の焦点となるに違いない。

もう、パートのコストメリットはない

もうパートのコストメリットがなくなりつつある。ベテラン経営者ほど頭の中をガラリと切り替える必要がある。

①最低賃金上昇、初任時給高騰

②週20時間以上勤務パートの社会保険(健康保険・厚生年金加入)

→厚生労働省が目指すのは、事業所の規模にかかわらずパート全員加入

③5年以上勤務した場合、本人の申し出により有期雇用から無期雇用へ

④パートの求人コストの高騰(コロナ後のパート主婦の取り合い)

⑤パート・アルバイトも有給休暇・育児介護休業を遠慮なく取得する時代に

最低賃金については、この調子でいけば2024年に全国加重平均1,017円となる。しかし、必ずこの先がある。これだけで一冊の本がかけてしまうが、最低賃金は1,300円程度を想定しておき、底上げ効果としてすべての時間給者の賃金は時給1,400円~1,500円を見据えておいた方が良い。企業淘汰は不可避である。零細企業の社長である私にも強烈な緊張感がある。

短時間正社員制度をつくろう

すべての中小企業において「短時間正社員制度」の導入は検討に値する。短時間正社員の求人は以下のようなイメージだ。

1日7時間勤務(社会保険あり)
時給1,370円
賞与あり
退職金10年以上勤務であり

月給 時給1,370円✕7時間✕21日≒20万円+交通費
賞与 夏10万円・冬10万円程度
年収260万円程度

もちろん、短時間正社員とはいえ、正社員なので、「いわゆる正社員」と同様の職務内容・責任を担っていただく。だから、質の良い人を採りたい。短時間正社員もしっかり研修を施し、「投資的人材」とみる。ライフスタイル・ライフイベントの変遷に応じて、フルタイム又は短時間(若しくは残業なし)幹部にもなっていただく。それが最も経済合理性が高いといえるのではないだろうか。

目次