ライバル会社への「営業秘密」漏えいを防ごう 2022 8/26 労働法務 2016年11月17日2022年8月26日 企業にとってのコアノウハウ・コア情報は「営業秘密」として法的に保護されます。多額の投資をして行った調査研究・開発情報などです。それが簡単に漏えいしてしまうと企業にとって大きな損害だからです。この「営業秘密」とは、不正競争防止法に規定されています。「営業秘密」としての要件を満たせば、差止請求、損害賠償、刑事罰(刑事告訴)などができることとなっています。 しかし、この「営業秘密」の要件は厳格です。営業秘密とは「秘密として管理されている生産方法、販売方法、その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」とされています。以下の3つの要件を満たすことが必要です。 その1 秘密として管理されていること(秘密管理性) その2 有用な営業上又は技術上の情報であること(有用性) その3 公然と知られていないこと(非公知性) 中小企業の労務対策として改善の余地があるのは、「秘密管理性」です。例として鍵をかけて収納しているかとか、「秘」「極秘」などその他の情報と客観的に区別されていて、その情報へのアクセスが制限されていることが必要です。でも、中小企業では、これがなかなか難しいことも事実です。 したがって、中小企業であっても最低限やっておきたい、退職後の競業避止義務も含めて情報漏えいガードに必要な対策は以下の通りです。 ① 会社規則(包括契約) 我が社にとって、何が営業秘密かを具体的に定義しておきます。 ② 誓約書(個別契約) 入社時、役職昇進時、重要プロジェクト参加時、退職時など随時に取得しておきます。誓約書においても、何が営業秘密かを特定・認識させておきます。ただし、悪い事をしようとする人物は、退職時に誓約書にサインをしない事があります。 ③ 競業避止手当・守秘手当 給与規程を変更し、当該手当を設置します。給与総額は増やしません。これは退職後の競業避止や秘密厳守のための「対価」です。 ④ 合理的制限理由 社員には職業選択の自由があります。したがって、謙抑的に制限する契約関係が必要です。営業地域・業種職種・制限期間をできるだけ限定します。当然、幹部社員は厳格な要請になりますし、平社員はそれほどの義務を課せないことになります。 上記対策を行っても、不正競争防止法違反を問うには私たちが想像するより、何倍も高いハードルがあります。刑事事件にできる事案はめったにありません。民事裁判で戦うと多額の裁判費用がかかった割には思うような結果が出ないことも多々あります。 しかし、上記対策は必須です。 「我が社は●●●と●●●の情報を競争力を支えるコアノウハウと考えている、この情報を漏えいする行為は断じて許さないぞ!(勝とうが負けようが)絶対に訴訟を起こすぞ!」という企業の姿勢・気迫の表明が最重要なのです。 また、誓約書違反の行為が退職後に発覚した場合は、即刻、内容証明で警告すべきです。 規則の周知、誓約書へのクドイほどのサイン要求はその姿勢の表れなのです。私のクライアントには毎回誓約書の内容を読み上げている会社もあります。手を抜かずに実行するべきです。 労働法務