なぜ、労基署にはタイムカードがないのか?

ご存じかと思いますが、民間事業所にしきりにタイムカード等の客観的記録による労働時間の把握を指導する役所である労働基準監督署はタイムカード等の客観的記録による労働時間の把握を自分たちはしていません。

労働基準監督官は、私たちに、タイムカード等の客観的な記録方法によることが原則で、どうしてもそれができない場合に限り、手書きの出勤簿方式を認めると言い放ちます。

興味深い国会の答弁書があります。平成16年3月2日 小泉総理時代に、衆議院長妻昭氏がしたタイムカードの導入及び賃金不払い残業に関する質問に関する答弁の一部です。

「厚生労働省における職員の勤務時間管理については、国の機関として国家公務員法、人事院規則等に基づき勤務時間報告書等を適切に管理することにより特段の支障なく行っているところであり、また、タイムカードのみでは職員の正確な勤務時間が把握できないことから、勤務時間の手法としてタイムカードの導入は必要でないと考える。」

「お尋ねの『タイムカード管理』が何を指すのか必ずしも明らかではないが、タイムカードの導入のメリット及びデメリットについては、その導入により職員の登庁及び退庁の時刻を記録するタイムカードのみでは職員の正確な勤務時間が把握できないと考えられ、また、導入のための費用も必要になると考えられる」

ここまでお読みになって「おいおい!」とツッコミを入れたくなるのは私だけではないと思います。

つまり、労基署は、

① 自分たちはタイムカード等の客観的記録は必要なく、紙の勤務時間報告書で「特段の支障なく」行っているのだから、何も言われる筋合いはない。

② タイムカードは出勤・退勤は記録できるが、正確な労働時間は把握できない。

③ だって、タイムカードを導入するのは費用がかかるんだもの。

でも、労基署が私たち民間事業者を指導するときは、

① 紙の勤務時間報告書ではなく、タイムカード等の客観的記録方法を導入してください。どうも”実際の労働時間”と乖離があり、君たちのやっていることは怪しいですからね。

② タイムカードを打刻するということは使用者の指揮命令下に入ったことを意味し、ほぼほぼ労働時間ですよね。

③ 費用がかかるというけれど、使用者には適正に労働時間を把握・管理する義務があるのですよ。

労基署を含め公務員にタイムカードがない理由は、民間事業者と同様で、タイムカードと実際の労働時間を管理するのはめんどうだからではないですか?つまり、紙の出勤簿や勤務報告書のほうが、”大人の事情で”使いやすいからではないですか?

自分たちがやらないこと、やりにくいことを民間事業者に押しつける。このようなやり方・考え方に私は賛成できません。自分たちは、1分たりともサービス残業をさせることはないから、紙の管理でOKだ、とでも言うのでしょうか。

労働時間の把握・管理を行い、時間外手当や休日手当を払うことは当然です。でも、役所がそうであるように、個別事情に応じた、各社各様の労働時間の把握・管理の方法が認められてしかるべきでしょう。

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