社長、基本給は5万円程度上がって当然ですよ! 2025 11/11 評価・給与 2025年11月11日X社の幹部会議 X社は年商30億円の地方都市に位置する小売業。経常利益5,000万円以上は必ず出しているが、パート・アルバイトの最低賃金対策で毎年1,000万円~1,500万円の利益がなくなっていくと予想されています。そんな労務コストの話をしているときに、ある幹部Aから「うちは社員の基本給が低いので5万円くらいは一気に上げるべきだと思います」と発言が出ました。そんなことをしたら大赤字に転落してしまうと社長は嘆きます。社長室におしかけて サービス業Y社の社員B(45歳、勤続6年)から、「私の弟の会社は、ここ3年で基本給が8万円上がったといいます。私の給与をあげてほしい。そもそも、うちの会社は給与が低いと思います。実は退職も考えています」と詰め寄ってきました。社員Bの評価は芳しくなく、上司・同僚からの評判はとても悪い社員です。社長は「それやったら弟の会社に行ったらいいやん」と言いかけたとおっしゃいます。1万円程度以上の昇給はずっとつづく? Z社は年商90億円の卸売販売業。業績は営業赤字ではないものの、某事業部の大赤字で決して芳しくありません。2023年、2024年は賃上げ機運にのって、平均で1万円以上の「賃上げ=定昇+ベア」を頑張ってやりました。2025年は沈静化して、3,000円~7,000円程度に落ち着いています。しかし、中堅社員Cから「昇給は5%、額では最低1万円以上ないと物価高に対応できない。なぜ、昇給額が昨年下がったのか。納得できない」と総務部長に くいついてきました。 このような話をあちこちでとても聞くようになりました。平均昇給5,000円の意味 平均的に昇給をずっと5,000円にするという意味を考えたいと思います。話をわかりやすくするために、20歳で基本給20万円でスタートとするとします。定年が60歳として毎年5,000円昇給するとします。20万円+5,000円×40年=基本給40万円となります。これに役職手当や家族手当が加算されることになります。たとえば、係長手当が月額3万円、家族手当2万円としたら、所定内賃金45万円で、これに残業代が加算されるので、月額賃金総額は係長で55万円~60万円以上になります。まさに一部の大手企業や役所の恵まれた賃金となります。 このように、平均昇給5,000円でも大変であることがわかります。おまけに、初任給が最低賃金上昇により上がっていきます。つまり発射台が25万円程度になるわけです。そうなると係長でも最低総額65万円以上の賃金となります。簡単な賃金テーブルと予見可能性が必要 なんの賃金テーブル・ルールもなく、時には1万円、時には5,000円というのは、今後やりにくいはずです。ベース昇給額の目安は提示しておく必要があります。それに加算するかたちで「今期はこのような定期昇給と是正昇給をしました」という必要があります。つまり、「本来、5,000円の昇給だが、若手の初任給是正のため、さらに5,000円の是正を行います(来年はありません)」という説明がいるのです。 話は違いますが、販売面の価格政策として、内的参照価格を下げないという定石があります。バーゲンセールをやって、ある商品の価格を下げて売ってしまうと、その大幅値引きの経験が消費者の記憶内にとどまります。そうすると、通常価格に戻すと「価格が高い」となってしまうのです。ですので、頻繁な値下げは避け、内的参照価格を下げないようにクーポンやセット販売などで対応するということになります。 これと同様に、デフレ時代にはなかった、2年にわたる大幅昇給により、従業員の「内的参照昇給額」が2023年、2024年に高くなってしまいました。大手企業の賃上げ報道も大きいです。したがって、企業体力にあわせて普通に戻したときに「昇給額が低すぎる」となったわけです。 ルールとしての評価ごとの昇給額を示すと、「なんだ!ウチの会社はその程度しか上がらないのか!」という結末になるかもしれません。しかし、給与の上げ方・上がり方の説明ニーズは益々高まっているのも事実です。 給与をもっと上げたければ、昇格する、役職者になることで給与を上げることができますよ、賃金は役割・成果で決まることを、表明し続けることが必要です。給与を上げてほしいと言い続ける社員ほど、役職者になるのは嫌だという人も多いものです。 日本全体が貧しくなっています。物価高で生活が徐々に苦しくなっており、従業員からしたら賃金アップはとても切実な問題です。よって、ルール・方針・制度がないと、毎年、毎年、冒頭にあげた3社のように社長は賃上げ要請に悩まされ続けることになります。 評価・給与