部長より若手の昇給額が大きいのはおかしいですよ! 2025 8/27 評価・給与 2025年8月27日課長に失礼ではないか? X社の人事担当役員に「先生、部長より若手の昇給額が大きい制度設計はおかしいですよ!」とコメントをいただきました。また、先日、Y社の総務部長には「課長の昇給が、新入社員と同じかそれ以下では課長に失礼ではないか」とご指摘をいただきました。 福田式では、給与制度の設計で、一定の職責以上の社員より、新入社員や20代の若手の方が昇給額が上回ることが度々ありえます。そのかわり上位等級は、実績に応じた昇格昇給・実績に応じた賞与を重視します。その考えについてのご批判となりました。勤務年数の低い若年者の昇給が大きいのはグローバルスタンダード 「部長より新入社員の昇給額が大きいのはおかしい」というご意見については、昇給原資が今まで以上に潤沢に確保できるとか、昇格昇給(職位・等級のアップに伴う昇給)なら妥当します。しかし、グローバルスタンダードでは、固定給の定期昇給は、若手や勤務年数が短い者を手厚くするのが一般的です。上位等級は、業務範囲・責任が安定し、市場価値も上限近くになります。賞与や業績給で評価すれば十分で、固定給を大きく伸ばす必要がありません。つまり、上位等級ほど、ゼロとは言わずとも、”チョロチョロの昇給“で良いのです。 昇給率発想ではやっていけません。また、「昇給額=評価」ではありません。「現在の給与の絶対額=評価」であることを忘れてはなりません。 「部長より新入社員の昇給額が大きいのはおかしい」「2,000円程度の昇給額は課長に失礼」このような発想こそ年功賃金・公務員の等級号俸制と昇給ピッチがしみついた日本型賃金システム・等級号俸制に毒された結果なのです。極論、管理職・高度専門職に定期昇給はいるのか?くらいの発想が必要なのです。新卒初任給30万円時代 この前、社員120名程度の立派な製造業J社の社長様から「先生の本を読んで、ウチも思い切って今年新卒初任給を25万円にしました。でも、営業部長が同業の会に参加したら、どこも25万円程度にしているというのです。これはもう大変ですね・・。」とおっしゃっていました。 大手企業において、新卒初任給30万円はまったく珍しくなくなっているのはご存知の通りです。採用困難な業種は、新卒初任給35万円以上です。中小企業も、2030年前半には大卒初任給30万円ないと見劣りするでしょう。昇給の方法を根本的に見直す 初任給という給与カーブの「発射台」が上がり、結果若手の給与が上がり、若年労働力の取り合いがますます加熱します。 従来通りの日本型昇給をするなら、定期昇給を積み重ねて昇給する基本給が高額になりすぎます。中小企業であっても、初任基本給が30万円であれば、従来型発想に基づき、賃金センサスの格差割合を用いてシミュレーションすると、係長の基本給37.5万円、課長の基本給44.9万円、部長の基本給54.6万円です。これに、役職手当など他の諸手当が加算されます。この論調では、部長の手当については、最低20万円はバランス上必要ですから、部長の給与は最低額は75万円以上になります。ダラダラ定期昇給を積み重ねていく、従来の賃金マネジメントが成立するとは思えません。 日本の定期昇給は、上位等級=年齢が高い・給与も高い=昇給額も大きいという賃金構造が設計段階で組まれます。しかし、グローバルスタンダードでは、固定給の昇給はインフレ調整程度、若手に昇給を手厚くするのは採用・定着戦略です。もっとも、ベテラン層であっても、市場価格が高い、採用困難職種は、マーケットの論理で市場にキャッチアップする「マーケット対応型昇給」が必要です。そうでなければ、一定の年齢・給与額からどのように昇給するかを本気で考えないといけないのです。おおむね40歳以上は自ら稼ぎ・結果を生み出すことが求められます。故に職責が上がったとき、そして、その職責での実績、結果で評価し、給与を決めていくほかないのではないでしょうか。 評価・給与