「先生、やっぱり最後は●●やね」給与は何に対して払うのか? 2025 7/14 評価・給与 2025年7月14日給与は人格に対して支払われている私たちは日々の仕事に対して給与を受け取っています。では、その「給与」とは一体、何に対して支払われているのでしょうか?成果に対して?時間に対して?労働力に対して?確かにそれらは一つの答えですが、私は25年間、生々しい労務の世界で生きてきましたが、実際はこう考えています。給与は、人格に対して支払われている。給与=等価交換? それだけでは説明できない現実経済学では、給与は、時間やスキルに対する“等価交換”であると説明されます。いわば「働いた分だけ報われる」モデルです。しかし、現実の職場では、それだけでは説明がつかないことが数多く起こります。たとえば――・誰よりも成績が良いのに給与がそれほど高くない社員・成果が曖昧なのに給与が高いベテラン・社長に70歳を超えても「あの人には居て欲しい」と言われる人これらの例は、市場価値ではなく“人格価値”に基づく報酬の存在を示唆しているのです。梅棹忠夫氏の「お布施理論」とは何かそしてその構造を、理論的に裏づけてくれるのが、文化人類学者・梅棹忠夫氏の「お布施理論」だと思っています。梅棹氏は著書『情報の文明学』の中で、貨幣経済に対抗するモデルとして「お布施」の概念を取り上げています。お布施とは、等価交換ではなく、徳や信仰に基づいて“見返りを求めず”に渡される給付です。仏教の世界において、僧侶が行う修行や布教活動に対して、信者はその人の“徳”に感銘を受け、お布施という形で支援を行う。そこには「何をしてくれたか」以上に、「どんな存在か」「どんな心構えでいるか」という人格の価値が強く影響しているのです。給与=現代のお布施?このお布施構造は、実は現代の給与体系にも密かに埋め込まれています。・信頼できる人には、多少無理があってもどんどん仕事を任せたい・不器用でも真摯な態度が報われるべきだ・組織に安定をもたらす“人格資本”にこそ報酬を与えたいこれはまさに、「見返りを超えた価値」への報酬、つまりお布施的な給与なのです。人格を報いる仕組みとしての人事制度人格に報いるというと、主観的で不公平だと誤解されることがあります。けれども、人格とは“信用・信頼・貢献”の蓄積された証であり、それは評価可能な資本=人的資本として捉えることができます。たとえば――・長年トラブルなく顧客対応を続けてきた・社内の後輩やパートに安心感を与えている・経営者と価値観を共有し、判断を任せられる存在・陰日向なく態度を変えず、決して裏切らないこうした人格的信頼こそ、組織の継続的利益に大きく貢献する“無形の成果”です。給与はそのような無形の資本に対して支払われる“お布施”でもある。それが私の考える「給与の本質」です。稼ぐための人事労務へ私はこの考え方を、「稼ぐための人事労務」の一つの基礎理論と捉えています。成果主義も大事。スキル評価も必要。でも最終的に組織を支えるのは「人格ある人」です。給与の奥にある“見えない価値”に目を向けることこそ、持続的に強い組織を作る第一歩です。実績をあげられた、立派なベテラン社長がしみじみとおっしゃいます。「先生、やっぱり最後は人柄、人格やね」 評価・給与