社内高齢化 役職定年制は廃止すべきか?

役職定年とは?

 役職定年とは、一定年齢に達した社員に対し、役職(管理職など)から退任させる制度です。大手企業の役職定年制は、おおむね55歳程度が多いです。課長・部長などの管理職以上が一般的です。目的は、若手の登用、組織の新陳代謝、人件費コントロールといったところです。

社内高齢化による役職定年制の運用が難しい

 中堅・中小企業の場合、現状、55歳役職定年はかなり難しいようです。聞くところによると、一応、役職定年で役職降格・給与減額となったものの、従前と同じ職務を行っているようです。会社としては、業務の内容や責任の程度を変えているつもりですが、本人はそのように思っていないというのが実情です(実際変わっていない場合も多い)。

 また、55歳役職定年とはなっていますが、結局、同一の役職をズルズル60歳定年まで、場合によっては、60歳定年後も続行していることが多いのです。

 中小企業が役職定年制の運用が難しい理由は、以下のようなものです。

 ①40代がごっそりおらず、引き継ぐ後任候補がいない
 ②役職定年後にさせる、給与に見合った、やってもらう仕事がない
 ③管理職が降りるメリットが少ない
  (引き継がないほうが、給与はもちろん、自らの重要感を満たせる)

では、役職定年制は廃止するのが良いか

 現に、大手企業の一部は、役職定年制を廃止している会社もあります。しかし、まだ多くの大手企業は役職定年制を手放していません。

 役職定年制を廃止して、能力や実績で評価のうえ、実力主義で役職者を抜擢するという理屈理論があります。ご説ごもっともです、ジョブ型の欧米においては、役職定年制は年齢差別という法違反でしょう。しかし、日本は事情が異なります。現実として、それでは組織が硬直化し、いつまででも役職者が役職者として居座り続けるのです。これでは若手のモチベーションを保てません。30代・40代のモチベーションの低下は、たちまち20代に波及していくものです。

 現に、役職定年制のない中小企業は、65歳や70歳を超えても「●●部長がいなくては・・」という状態になっています。

若手と中高年のモチベーションの選択問題

 この問題は、若手のモチベーションを重視するのか、中高年のモチベーションを重視するのかの選択の問題です。昨今、離職を食い止めるため、若手のモチベーションや意向に配慮する傾向が顕著です。しかし、会社の屋台骨を支えている中高年(60代含む)のモチベーションもないがしろにすることはできないのです。

 メガバンクなどは中高年のモチベーションよりも若手のモチベーションを重視して、某メガバンクは50歳を役職定年としています。これはなかなか強烈で、50歳を契機に転職していきます。しかし、中小企業は50歳や55歳は現実的ではありません。

中小企業は「60歳定年+役職定年+5年サポート期間」を原則としよう

 60代の管理職が多数活躍しておられることは存じ上げています。しかし、終わり・期日がないと、いつまでもダラダラと時間を重ねてしまいます。ですので、役職定年制は原則残したい。ルールがないと役職降格もしにくいものです。

 最低でも「60歳役職定年」としたい。60歳時点で管理職を降りて、後継管理職と5年間並走して、後継管理職をサポートする立場にまわってほしいのです。いま、管理職の仕事は大変です。多様な人材(Z世代、ゆとり世代、中高年、シニア、パート・アウトソーサー、外国人、業務委託、副業人材、病気持ちの人、障害者、スポットワーカーなど)をパッチワーク的に集めて成果を出す必要があります。従業員の権利意識も昔と比べものになりません。若手人材の定着・育成も重要な課題になります。人事評価実務、面談なども時間がとられます。後継管理職の不得手な部分を役職定年後、部分的にフォローします。5年間は2人で管理職をこなすイメージです。これを65歳まで継続します。
 この5年にはもう一つの意味があります。元管理職が5年の間にプレーヤーとして会社が必要とする実務スキルにも挑戦することです。そして、65歳からは完全に管理職まわりを降りて、実働部隊を支援し、70歳で完全引退です。これからの中小企業の最大の福利厚生は70歳まで働けることです。

 気になるのはこの「管理職」の給与ですが、月給は60歳時点(役職定年)では減額せず、賞与で調整します。もちろん、定昇・ベアはなしです。呼称は参事・参事・主事・理事・マネージャーなんでもいいです。

 もっとも、大手企業出身で50歳後半で中小企業に管理職で入社してくるような人は、65歳役職定年で良いです。

 65歳になったら、月給30万円以下(残業なし)に減額してもらいます。65歳になったら年金が満額もらえるので、「賃金+年金」で生活ください。「先生、私はいま60歳ですが、後任がおらず、私がやらざるをえないんですよ」とよく言われます。そのようなご事情もわかります。ですが、それは例外である、事前対応不足であるという認識を、会社も管理職も持ってほしいわけです。5年、10年すぐに経過します。ないように見えても、社長を含め「高齢マネジメント」は、弊害は大きいのです。

目次