「賃金」を起点として経営目標を決定する 2024 10/31 評価・給与 2024年10月31日 賃金とは企業経営にとって最も怖い経費 中小企業にとって最も怖い経費は賃金である。特に労働集約産業である、飲食、小売、建設、運送、ホテル、病院、介護施設などは成り行きでやっていると赤字になり、労務倒産する。単純な話だが、最低賃金が毎年平均70円以上ずつ上がると(2023年+41円、2024+51円、2025年+60円以上と予想・・・)、月間平均所定労働時間を168時間とすれば、毎年10,000円以上ボトムが上がることになる。与野党で合致している政策目標である最低賃金1,500円に向けておよそ8年以内で到達。中卒初任給が25万円になる。そうなると、中小企業にとっても高卒26万円、大卒28万円という数字も視野に入る。これに16%超の法定福利費がかかる(健康保険・介護保険は間違いなくさらに上がる)。社会保険の適用拡大もさらに進む。業績悪化があったとしても人のクビは簡単にきれない。一度上げた賃金はまず下げることはできない。 賃金上昇からすべての経営目標を考える A社は毎年経営方針を発表し、成長を遂げている。K社は昨年から賃金の上昇率から逆算して粗利や売上目標をかかげるようになった。K社は年間休日が100日に満たなかったが、計画的に120日を目指すことが経営計画書に明記されている。また、バランスシートの目標も、2年間売上がゼロでも社員の賃金を賄える内部留保を目指している。賃金を起点としてすべての経営目標を決めている。 B社は5年間の中期経営計画をたてている超優良企業である。Y社は今後7年間、おおむね社員のベースアップ金額を決定している。もちろん、ベースアップ金額なので、定期昇給金額は別である。これをやるには、シビアな粗利益の増収増益目標が要求される。 経営者にとってはとても辛いことだが、今後の賃金は最低賃金1,500円までは高い信頼性で予想ができる。最低賃金が上がれば、最低賃金+アルファの初任給になっていく。少なくとも5年間は賃金上昇率を考えて、賃金原資を確保しながら、企業を存続させるためには、売上、粗利、経費、利益を構成する各項目がどうならなければならないのかを具体化しなければならない。 こうなると、人員数はおろか、事業構造そのものの問題に行き着く。2023年、2024年のように毎年の賃上げ率4%~5%ずつ上げていくことは、現状の延長線上では「できない」ことに気づく。これだけでも賃金を起点とした経営計画をつくる意味がある。 10年先の賃金を計算できるのが立派な会社であるという愚 社員の安心のためには、10年先まで賃金が自分で計算できる賃金制度を社員に公開するのは理想かもしれない。しかし、10年先の賃金を約束どおりに払う、会社の存続が見通せる経営基盤のある中小企業はほぼない。よって、賃金上昇を加味した経営目標に基づいていない賃金表とそれに基づく賃金管理は、死に物狂いで戦う経営者にとって、机上の空理空論でしかない。従来型の40代以降の賃金カーブ、従来型のベースアップを体現する日本型賃金システムの発想を捨てなければならない。経営基盤の弱い中小企業は、役所のような等級・号俸・年齢給など、予定調和の賃金制度はつくれない。 評価・給与