オーナー会社は社員持株会はおやめなさい

「社員の士気を高めるために社員持株会をつくりたい」というご相談がたまにあります。私は「やめておいたほうがいいです」とお答えしています。

社員持株会とは、法的には民法上の組合であり、株式保有資金を従業員から集め、持株会として株式を購入し、持株会に信託する方法等があります。

持株会を作るのはとても簡単です。私も15年以上前、持株会設立のコンサルをしていた時代がありました。しかし、今は大きなリスクがあると考えています。自分自身の反省もふまえ、一部の例外を除いて持株会をつくって良かったという事例ははっきり言ってありませんでした。

デメリットは思いつくままに記載しますと、

その① 持株会は必ずしも従業員の士気の向上にはつながらない。社員の士気・モチベーション、ロイヤルティーは、もっと別のところに源泉があります。

その② ほぼ毎年配当をする必要があります。ほとんど配当がない状況ですと、持株会の目的がオーナー社長の相続税対策とされるリスクがあります。また、以前、持株会が形式的なもので実体のないものとされ、税務上否認されたこともありました。

その③ 持株会の従業員が退職した場合に、持株会に買取資金がなかったり、買取希望者がいない場合は面倒なことになります。

その④ オーナー社長の株式を持株会(従業員)に譲渡する場合、税務上、贈与とならないためには、配当還元価格で、超低価格で譲渡できます。しかし、逆に持株会からオーナー社長が買い戻す場合、数十倍もの高額となります。

その⑤ 持株会からオーナー社長が類似業種比準価格等より低価格で買い戻すと、オーナー社長に贈与税が課税されます。

その⑥ 持株会から会社が法人税法上の株価より低価格で買取りすると、会社には受贈益が発生、法人税等の負担が増加します。

その⑦ (よくあるケースとして)当初、会社が上場を目指して従業員持株会をつくったものの、上場しない(できない)となった場合、持株会が解散すると、持株会の各従業員はオーナー社長や会社への買取請求を行う事例があり、上記の問題が起こります。

その⑧ 会社の帳簿閲覧権(株式3%保有)を持ちます。会計帳簿閲覧権には、役員報酬、賃金台帳、得意先台帳、仕入先台帳等も含まれます。また、役員退職慰労金規程の閲覧も可能となります。集団的な労使トラブルとのからみにとても苦労したことがありました。

以上の通り、持株会はとても簡単につくれますが、持株会をなくすにはオーナー社長又は会社にとって大きな負担となります。行きは良い良い、帰りは怖い。メリット・デメリットをしっかりふまえ、部分的な良い面に引かれて軽々につくらないことが肝要です。

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