業績を上げたいなら、そのパワハラ研修はやめなさい!?

これではダメだ!という例

 X社は社員120名の卸売販売業。最近、業績は低迷している。令和4年4月1日より、いわゆるパワハラ防止法が中小企業にも適用されるのを受けて、管理職に対して「パワハラ防止研修」を実施した。講師は、マナー講師もお願いしている女性社労士さんだった。
 講師は、パワハラとならないための「NGワード」、「感情的にならないアンガーマネジメント」、「懇切丁寧な指導の仕方のロールプレイング」など、1日かけて研修を実施した。

 管理職の感想は、「やってはいけないことを再認識した」「非常に難しい時代だと感じた」「法違反にならないようにしたい」「特に若手には怒らないように気をつけたい」などの声が多かった。

 しかし、今求められることは、経営者・管理職は「やるべきこと」「やらなければならいこと」を石にかじりついてもやりきっていく学びだと思う。そのうえでパワハラ防止研修をするならよいだろう。

 しかし、X社の社長に聞いてみると、ここ数年実施した管理職研修は、なんとこの「パワハラ防止研修」だけだという。こんなブレーキだけ踏むだけのマネジメント研修?を推奨していると、企業が弱体化の一途をたどる。もっと、原則の徹底が必要だ。例外から教えてはいけない。

いま、必要なのは鬼上司になる哲学と訓練だ!

 パワハラ防止研修は、「鬼上司」になるための研修と位置づけたい。もし、プロデュースするなら、「鬼上司になるためのパワハラ防止研修」だ。いま、日本が求めているのは「鬼上司」である。なんとしても売上・利益をあげていくのだという凄まじい気概をもった上司だ。

 今は亡き、伝説の経営者 稲盛和夫さんは以下のようにおっしゃっている。

『「一生懸命に頑張っているけれども、もうあかんようになったらしょうがないか。
  翌月は頑張ろうや、皆さん。」
  などという調子で、一生懸命やったのだから仕方ないと言っていたのでは絶対に強くなりません。
  私は社員に、
 「よし、おまえがやれないのだったら、俺は後ろから機関銃で撃ってやる。
  どうせ後ろに逃げても死ぬんだから、死ぬくらいの気迫で前へ進め!」
  と言ったことがあります。』

 この発言はパワハラ研修の先生からすれば「稲盛君、それはパワハラなので絶対に謹むように!」と指導するだろう。

 一方、稲盛和夫さんは次のようにもおっしゃっている。

「しかし、闘争心や意志力は、両刃の剣です。誤って限界を超えれば、自分自身や部下、集団も破滅させてしまう危険があります。だからこそ、人間性を高める、心を高めるということが必要なのです。」

 あまりに深い発言だ。この「ギリギリ」をわかってパワハラを理解し、防止に努めてほしい。このギリギリについて議論するほうが真の管理職研修になるのではなかろうか。

リーダーは不作為こそ、罪として恐れるべし

 パワハラ(違法行為)は、文脈、実態で判断される。アホ、バカ、マヌケ、等の録音に残ったその一言をもって、パワハラだ!とは直ちに判断されない。もちろん、このような発言は不適切であり厳に慎むべきものである。そして、適切な業務指導の範囲を超えて、人格非難・人格攻撃は絶対するべきではない。

 しかし、社会のため、顧客のため、集団を守るために何としてもやり遂げるという闘争心と意志力は、讃えられることはあっても糾弾されてはならない。

 何もしない、目標達成への執念のないリーダーは、パワハラ問題も起こさない。

 京都市の市長は、パワハラは絶対しないニコニコ温厚なお人に違いない。しかし、京都市は、改革らしい改革は進まず、世界有数の観光都市でありながら財政再建団体になると言われている。

 一方、明石市の市長は、目標達成の執念から部下への叱咤激励を超えて、感情的になりパワハラをしてしまった。これは糾弾されるべきことである。しかし、明石市は、

●正規職員数の削減、職員の給与カット、各種事業の見直し、こども医療費の無料化、保育所の新設などの新たな行政サービスに必要な財源を捻出

●財政の収支均衡も実現

●人口増加、兵庫県内41自治体のうち、人口がV字回復したのは明石市のみ

●明石市独自の5つの無料行政サービスを実現し、9年連続で人口増加、つまり明石市は健全な財政のもと、住みやすい街になっている。

 リーダーのパワハラは違法行為で咎められるべきものであることは間違いない。しかし、リーダーの不作為も目に見えない「不適切」の極みであり、「罪」として私達は自らを反省し、厳しい姿勢でチェックしていくべきである。

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