中小企業の社内不倫とその対応

1 社内不倫が起こす社内問題

社内不倫とは社内での不倫関係、たとえば、妻子のある課長と部下の女性社員との不倫関係などです。

社内不倫が横行しているA社がありました。その社長も社内不倫をしていました。不動産会社で、不倫相手の事務員の女性は社長が連れてきた元キャバクラ嬢とのうわさでした。

社長を見習って?A社の幹部の4人のうち2人が社内不倫をしていました。その後、この会社は業績が急降下どころか、深刻な刑事事件が起こったのを記憶しています。

B社の社長は女性社員から「社内不倫で雰囲気が悪くなっている。あの二人を辞めさせてほしい」と詰め寄られました。証拠がつかめないので、社長も困っており、そうこうしているうちに事務の優秀な女性が2名そろって退職しました。

C社は、奥さんが社員の不倫に気づき、奥さんが精神不安定になり、「会社のせいだ。訴える」と主張してきました。法的にむちゃくちゃな話ですが、会社に押しかけ、頻繁に電話をしてくるので対応せざるを得なくなりました。

2 「社内不倫」で懲戒処分できるか?

よほど職場で不埒な行為を行っていたなどの特別の事情がない限り、懲戒解雇はもちろん、普通解雇もできないのが原則です。

では、解雇以外の懲戒処分(けん責、減給、出勤停止等)はできるかですが、法律論では難しい問題もあるのですが、不倫によって業務に支障があるのなら、処分することは十分にありえます。

しかし、その場合、噂話だけでなく事実・証拠をおさえなければなりません。ただ、不倫現場をおさえるのは社長が携帯カメラを片手に尾行でもしない限り難しいでしょう(昔、実際に尾行した社長もおられます)。

3 社内不倫は放置すべきではない(初動が大切)

規定に則った処分、法律的対応が難しくても労務的には疑わしいケースを含めしっかりと対応をすることが必須です。
「このような噂がたっているが、真実か?」などヒアリングなどを行います。ただ、本人たちは「そんな事実はありません」と否認します。

以前、ある会社で不倫を辞めさせようと説教したら、過度な私生活の干渉だ、パワハラだと主張されたこともありました。

しかし、社内不倫はかっこうの話のネタになりますので一気に社内に広がります。そうすると、職場の雰囲気・風紀が悪くなってしまいます。

私は、少人数の企業なら双方又は一方を退職勧奨することもやむを得ないと考えます。一定の規模であれば、一方を別の部署、できれば遠方の勤務場所に配置転換すべきです。

要するに法的には追及することは困難であっても、違法不当と突っ込まれない範囲で、徹底的に糾弾・改善することに妥協してはいけないということです。

4 社外不倫はどうするか?

社外つまり、会社・業務と全く関係のない女性との不倫関係であれば、純然たる私生活の範囲の問題なので懲戒の対象にはなりえません。 社外といっても取引先関係者との不倫問題はどうするかといった問題は生じます。

たとえば、自社の営業担当者と取引先との女性従業員での不倫関係です。これは自社の企業秩序のみではなく、取引先の秩序も乱してしまうことになります。結果として取引先の信頼を失うことになりかねません。

したがって、こうした不倫行為は、取引先を失うおそれが強く、業務への支障が大きいとして、懲戒処分という対応もありえると考えます。また、事案や当人の立場によっては退職の勧奨などもありえますが、直ちに配置転換を行うなども有力な選択肢となります。

目次