業務委託契約を活用する

業務委託契約とは、法律用語ではありませんが、役務の提供契約の事です。請負契約と(準)委任契約が混ざったビジネス慣行上の契約といえます。

労働関係諸法令から逃れるために、「業務委託契約」という契約書を実質労働者と契約している事例に遭遇することがありますが、これが最も危険です。残業代の支払い、社会保険、健康診断、災害補償など実質基準で判定される労働契約に対して、何ら義務を履行していないことになるからです。

私は経営者の「人を思うように動かしたい」という本能を捨て、パートナー意識を強める、権限ではなく権威、理念やビジネスモデルによって人に動いてもらおうとするなら、これからは業務委託契約も使えるのではないかと考えています。ポイントは以下の事をしっかり守ることです。

●あれこれ仕事のやり方に対して指揮命令しないこと(=一定の専門性がある)

●労働時間管理をしない、始業・終業時刻などを設けないこと

●副業・兼業が自由であること(1社専属にしないこと)

●会社からの仕事の依頼を選択または拒否できること

●なるべくタイムチャージ(時間給)は採用しないこと

●なるべく仕事の道具は自分のものを使ってもらうこと

●勤務場所はなるべく問わないこと

この要件をすべて満たなければ業務委託契約が実質的に認められないということはありません。法的に明確な基準がないからこそ、油断するとひっくり返りやすいので注意が必要です。

したがって、個人との契約関係で業務委託契約として成立する可能性がある業務とそうでない業務があることになります。

(ふさわしくない業務)

事務員、製造ワーカー、各種補助職

(ふさわしい業務)

タクシー、運送、美容師、マッサージ師、税理士、弁護士

多様な働き方の議論がさかんですが、企業と業務委託者との関係の研究も必要な分野です。

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