中小企業の「降給」規定の定め方 2022 10/03 評価・給与 2021年5月28日2022年10月3日 給与は原則下げることはできないけれど・・・ 日本の労働法制では賃金の保証は大きな柱となっています。「給与は原則として下げることができない」と言われます。この認識は正しいです。給与を下げるには従業員の個別同意が必要となります。しかし、形式上同意があるだけではだめで、形式的同意を裏付ける実態的な理由がなければ、真意の同意があったといえないとされることがあります。 でも、裁判所でも降給も全く認めていないわけではありません。具体的な規範はイマイチ明らかではありませんが、少なくとも以下の要件が必要と考えます。 降給規定が存在すること(賃金規程に降給の根拠があること)1回の降給額に制限があること(職務変更の場合を除く)不服申立て制度があること一応、人事評価制度があること 降給規定の例 たとえば、以下のような降給規定がありえます。 (降給規定の例) 第〇条 以下の事由がある場合、降給を行うことがある。 ①半年毎の業績評価(上位からS、A、B、C及びD)において、3回連続C以下又は2回連続D以下となり、ジョブグレードが降格となった場合 ②懲戒処分による降格及び勤務成績不良等、職務不適格事由による人事権の行使により、役職及びジョブグレードが降格となった場合 ③その他前各号に準ずる場合 2 降給を行う場合は、降給を行う1か月前に降給を行う理由を書面に対象従業員に伝え、対象従業員は通知後14日以内に書面にて不服を申し出ることができる。 3 1回の降給は基準内賃金の10%以内とする。10%を超える場合、その超えた分は調整手当とし、翌年以降に消却する。ただし、前条②の場合を除く。 ちなみに、上記①は人事評価に基づく降給を、②は役職降格となって、役職手当等が外れた場合の降給を明示しています。②のほうが、客観的に合理性があると認められやすいので、人件費の行使による職務変更による降給が運用上は使いやすいでしょう。 ”一応の”人事評価制度 なお、人事評価制度ですが、裁判所はその内容に深く立ち入ることはしないと考えます。つまり、制度の仕組み・ロジックだけを形式的に評価するにとどまらざるを得ないからです。経営判断・企業の内部自治が尊重されているといえます。日頃のマネジメントは絶対におろそかにしてはいけませんが、形式的な人事評価制度は“一応ある程度”でいいのです。 加えて、降給の可能性があるなら、半年~1年前に「あなたは現在Cが連続していますので、次回Cであれば降給の可能性があります。ついては、●●の点と●●の点を改善してください」と事前告知することも制度化しておくと良いと考えます。 評価・給与