定年延長するなら退職金制度を見直しなさい

70歳までみんな働く社会に

改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました。従来は65歳までの雇用確保措置が義務付けられていましたが、これに加えて70歳までの就業確保措置が努力義務となったわけです。

努力義務ではあるのですが、早晩、68歳~70歳までの雇用措置が義務付けられるとしても不思議ではありません。なぜなら、年金財政がもうもたないので、企業の賃金で食べてもらうほかないので日本の現実だからです。

確かに若年労働力が不足し、60歳以上のシニア層を戦力化しなければならないのは事実です。しかし、仮に70歳定年などが義務付けられたら企業のコスト増は甚大です。

私は中小企業の最大の福利厚生は70歳以上まで本人の働く意思と能力があれば働けることだと考えています。大手企業にはこの発想はありませんね。  

定年延長とセットで退職金制度の内容を検討しよう

しかし、ただ単に定年を延長すると、仮に年収400万円として10年間で4000万円の賃金コストを負担します。  

現在の退職金制度の多くは昭和30年代・40年代にその原型ができて、平成になり企業年金廃止のときに若干の“アレンジ”を加えたにすぎません。つまり、定年55歳、少なくとも60歳で多くの人が引退する前提で現在の退職金制度が構築されていることは確実です。  

退職金制度も賃金ですから、一方的に規程を不利益な内容に変更することはできません。でも、合理性があれば変更することができる余地があります。合理性の中身は①経営上の必要性、②社員の不利益の程度、③経過措置、➃代償措置、⑤社会情勢(世間相場)、⑥従業員への説明・交渉経緯などがあげられます。  

たとえば、退職金が60歳定年で1,000万円であったします。継続雇用で勤務した場合でも年収250万円程度で65歳まで雇用されるに過ぎなかったとしましょう。この会社が退職金を廃止するという不利益変更を行ったとしても、上記③の経過措置に留意し、➃代償措置として定年を70歳にしたとします。

そうすると、退職金制度廃止前の60歳~70歳の年収合計は退職金1000万円+年収250万円×5年=合計2,250円となります。  

一方、退職金廃止後は年収400万円×10年=4,000万円となります。  

この変更はいきなり退職金をゼロにするということではなく、経過措置を設けるなら、決して合理性がないとは言えないでしょう。これは少しシンプルすぎ、極端な例ですが、申し上げたいことは定年延長をする場合、過去の遺物である退職金制度を見直す(廃止又は減額する)というセンスをもって戴きたいのです。  

もちろん、退職金の廃止・減額をしなければならないというわけではありません。余力があれば維持・増額すべきでしょう。しかし、少なくともこれからの社会経済情勢では60歳定年で退職金を払うというの時代に合わないですね。    

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