働き方改革で残業代が減った場合の対応 2022 10/03 評価・給与 2019年3月1日2022年10月3日 G社は従来、月間60~70時間の残業が状態化していた社員数100名の地方の製造業である。しかし、社長の決断で、働き方改革を断行した。徹底的かつ莫大な省力化投資を断行すると同時に、業務を整理して、大幅に派遣社員を増やした。すると残業が見事に減った。今では月間20時間程度である。働き方改革成功である。諸々の事情で利益が大幅に増えたわけではなかったが、賞与では社長も還元を表明し、前年の1.3倍程度の賞与増額となった。しかし、社員から猛反発。「月々の生活が苦しい」「給与をあげてほしい」「いま、外部労組に相談している」などの声が鳴りやまない。 目次中小企業の働き方改革が進まない理由の一つに残業代がある。 残業代が生活費に組み込まれている。いわゆる「生活残業」である。法律が変わるというけれど、残業代がなくなったり、減ったりするのは勘弁してほしいとの声があちこちで聞かれる。残業が多すぎるのも採用に悪影響だ。しかし、残業がほとんどなく、所定内賃金が高くない場合も採用に重大な悪影響がある。 中小企業はそもそも賃金ベースが低く、残業代で食べているという感が否めない。 食える賃金というのは「残業代込み」の話なのだ。 ここで経営者は対策にせまられる。上記のG社は結局、激変を緩和するための手当を経過的に設けざるを得なくなった。 対策とはどのようなものだろうか? 前提として、社長が働き方改革の実現と同時に、「処遇に関する方針」を明確に打ち出す必要がある。社員は働き方改革の末に自分たちの幸せがあるのだろうか、常に疑心暗鬼なのだ。 その1 残業代が減った分、賞与で還元する これは当然の話で、このような話をしてもなかなか社員は動かない。月々の手取りが減ることに猛反発される。もともと賃金ベースが高い大手企業や役所なら通じる話。 その2 賃金ベースをあげる これが最も簡単な話だが、そう簡単にできる話でもない。事業と組織の未来を見据えた中長期的な周到な準備が必要となる。 したがって、昨今の採用市場を勘案して、35歳未満の若手を中心にベースアップを行わざるを得ない(これは8割の中小企業が程度の差こそあれ実行している) その3 ノー残業手当 たとえば、15,000円/月をノー残業手当として支給する。残業がなければ、15,000円を支給する。残業があって残業代が10,000円となれば、ノー残業手当を5,000円支給する。残業代が15,000円以上であれば、ノー残業手当は不支給となる。 その4 副業を容認する もともと、中小企業の社員は結構な確率でこっそりと副業していたりする(ドライバー、ホステス、製造ワーカー等)。副業は福田事務所がお勧めしている対策ではないが、チラホラと出てきている。「賃金ベースが上げにくい」+「残業代が激減している」ことへの社員の不満を避けるための苦肉の策にみえる。厚生労働省も働き方改革を推進する一方で、副業も推進しようとしている。今後も出てきそうな予感だ。 その5 賃金制度を抜本変更する 多くの企業の現行の賃金制度の根本発想は「平成」どころか「昭和」である。若いときに賃金が低いことを我慢して、年をとったらそのパフォーマンスに比して高めに賃金を受け取れるのだ。しかし、いま時代は「同一労働同一賃金」の方向へ確実に動いている。新卒初任給が25万円や27万円などもでてきた。また、管理職といわれる方へ残業代支払いも無視できなくなった。従来の「職能資格制度」的な賃金システムは「同一労働同一賃金」「残業問題」には太刀打ちできない。抜本変更して「デザイン」し直す必要がある。 評価・給与