表彰制度をつくるときの注意点はありますか?

一つ目は、表彰制度の目的は、個人へのスポットライトを強化すること、つまり、日常のシステムでは光が当たりにくい個人への「存在承認」を強化することであるという理解が重要です。

承認は3つの種類があります。子どもの勉強を例にとれば、

成果承認(HAVE) 「100点とって素晴らしいね」

行動承認(DO)   「いつも机に向かって努力して素晴らしいね」

存在承認(BE)   「あなたがいてくれて素晴らしいね」

(余談ですが、某有名進学塾のカリスマ講師によれば、「存在承認」を強化すれば勉強する子どもになり、結果として受験に成功するといいます。)

私はクライアント企業の経営方針発表会や新年会、忘年会に参加させて戴き、表彰の現場に頻繁に立ち会います。よくあるのは以下のような感じです。

・永年勤続表彰(5年・10年・20年・30年)

・最優秀賞(優秀賞受賞者とは別に社内で1名)

・優秀賞(各部門1名ずつなど)

・ベスト●●(●●は毎年変更する、会社ごとにこのような賞が複数ある)

皆さんは表彰制度の本質から、上記では何が大切だと思われますか?

それは「永年勤続表彰」です。

つまり、会社に「存在(在籍)」していれば、誰にもチャンスはあるからです。

某上場企業では、毎月何らかの表彰に加え、年間でも正式プロセスに基づいた表彰があり、さらに社員1000人中、年間で1回も表彰されなない人がいないように管理しているともいいます。これもすごいですね。中小企業なら1年間に全員表彰される制度も逆に白けてしまうので、「3年間~4年間で全員何らかの表彰がされるよう配慮する」という程度にとどまるでしょう。

二つ目は、これが非常に重要なのですが、優秀な人、会社の業績に貢献した人が「A」評価で、素晴らしい、としっかり言える人事評価制度をつくってから、積極導入しなければならないということです。

表彰制度の本質は、優秀な人や売上利益に目に見えるかたちで評価する制度ではなく、陰でコツコツ頑張っている人など、通常の人事評価制度ではうまく「存在承認」ができない人に対して制度化するものです。

適切な配置や人事評価なく、周囲から人望がないと判断されている人が表彰されたりすると、まともに頑張っている人が白けてしまったり、優秀な人材が辞めることさえあるのです。

たとえば、社長が稲森さんの盛和塾で学んで、「営業利益10%の会社になって、社員に物心両面で報いるぞ!」とおっしゃっていたとします。稲森さんによると「企業経営は営業利益10%なければダメだ!」とおっしゃっているようですが、中小企業が営業利益10%を継続維持しようと思えば、相当な経営革新が必要になります。したがって、その方針に沿って、果敢に挑戦し、泥にまみれて、会社に貢献した人を過大に大げさに評価する仕組みのほうが先でなければならない。逆にマイナスの貢献をした人はそれなりの対応をしなければならない。つまり、明明白白な「信賞必罰」の制度づくりが先だということです。

ただ、これだけだと事務や倉庫でコツコツ頑張っている人やパートさんにスポットライトが当たらない可能性があるので、表彰制度で個人への承認の仕組みをセットするということです。

三つ目は、女性職場では曖昧な理由で一人だけ表彰というかたちで持ち上げないことです。女性は周囲がよくわからない理由で持ち上げられると、その持ち上げられたほうも困ってしまうのです。本人からすれば、褒めてもらうのは嬉しいが、公式に持ち上げられるのは後でめんどうくさいので嫌だということです。したがって、上司推薦及び他者推薦など正式なプロセスで選考が実施されて選ばれたということを担保しておかないと、白けてしまうことになります。特に女性のパートさんを表彰するときは注意が必要です。

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