人件費を変動費化させたいというニーズ 2022 10/03 評価・給与 2020年1月4日2022年10月3日 経営者のニーズとして、業績に応じて給与や賞与を変動化させたいというニーズがある。一方で、労働契約法等により強制的な無期転換を認める法整備などから、有期契約労働者を簡単に雇止めできるかといえば、なかなか難しくなってきた。また、人出不足もあいまって、いわゆる非正規労働者においては、賃金水準を含め「正社員」に徐々に近づいている。そして、正社員においては賃金は極めて厳格な契約法理にて保護されている。 目次人件費を変動費化させたいというニーズにどのように対応するのか? 労働法の厳格化、人出不足などにより経営者は苦しい立場におかれている。つまり、先行き不透明な状況下で、経営者は業績に応じて人件費を変動費化させたい、一方、従業員からすれば、給与・賞与は安定的に貰いたい、立場が違えばニーズが異なる。 私は制度設計上、変動費化できる余地をできるだけ仕組んでおき、実際は経営を安定させ、”結果として変動費化させない”というのが経営の定石だと考える。 この「変動費化の余地」とは、極めて少ないが以下のようなものとなる。 ①職務配置によって諸手当金額を変化させる 例)営業手当 営業で振るわず内勤になった場合、営業手当がなくなる 例)役職手当 課長降格となって、課長の役職手当が外れる。 ②賞与を年間4ヵ月分以上支給する 一般的には賞与は年間2~3か月分程度だが、4~5カ月支給できる収益性を保つ。イメージは夏1.5、冬1.5、決算賞与1だ。そして、業績悪化時は年間2か月分程度(夏1・冬1)となる(つまり、業績が悪化したとしても年間2か月分程度は死守する) ③昇給金額を約束しない A評価なら●円昇給、C評価なら●昇給など評価と賃金が明確な会社がある。このような制度はおすすめしない。もちろん、モデル賃金を保持し、理想的な賃金カーブ、つまり羅針盤はもっておく。羅針盤があっても、長い航海においては荒波がくる。このときに昇給停止又は微増はやむを得ない。この羅針盤は「世間相場より10%高」である。 ④退職金でさえ変動化させる 退職金は賃金の後払いと言われている。しかし、原則として、今の働きは今報いているという処遇構成をとりたい。だって、数十年先の退職金なんて保証できますか。会社もないかもしれない。しっかりとした積立等をしないなら退職金は「おまけ」くらいに考えてほしい。そのような場合、退職金について、当該社員の退職時の会社の内部留保(いわゆるB/S)に基づいてポイント単価が決まる「ポイント制退職金制度」などがありうる。今後、退職金は大きな問題になる。払えない会社が続出する。積立てなどをしていない、積立が要支給額に到底及ばない退職金は放置すべきではない。 ⑤休業制度を規定化しておく 早帰りを規定化する。仕事がなければ帰ってもらう。これにより賃金が通常の9割くらいになることがある。法的には6割以上払う義務があるが、リーマンショック級の危機があったとしても6割はきつい。減額幅は10%までだろう。 何度も申し上げるが、決して社員の給与・賞与・退職金を下げたいわけではない。全社一丸となって、稼ぎに稼いでできるだけ配りたい。そして、有能な人材を確保・定着させたい。 でも、経営にはマサカという坂が10年に1回はある。 また、数年に1人はでるモンスター社員・問題社員に対して、理由付けをもって、ビシッと給与・賞与を引き下げられるにようにしておきたい。「先生、どうにかしてください」と相談をされる一方で、このような問題社員に対して、昇給も行い、賞与もしっかり支給している会社がある。脇が甘いと言わざるをえない。 評価・給与