一人当たり粗利益を上げる経営計画を立てよう

儲からないが賃上げ要請がますます強まる

木材価格の高騰、ガソリン価格の高騰で、2022年4月に賃金制度を導入する予定であった会社2社につき、導入が保留になった(ともに、初めてお会いしたときには、儲かって仕方がなかった会社だが、今年赤字に転落する)。この会社だけでなく、円安・原材料高が止まらず、多くの会社は「賃上げ」余力がない。でも、人材を確保・定着させるためには、賃上げは不可避なのだ。いま経営者はこの板挟みにあっている。

これから益々、高労働生産性社会になる。儲からないが、人を採用・定着させるために賃金を上げざるを得ない。特に非ホワイトカラー(介護、建設、ドライバー等)の人手不足は、今よりもっと深刻になることは間違いない。  

決定的に重要な経営指標は一人当たり粗利益である

私は賃金のコンサルタントをしている。その際に、クライアントより経営計画書をいただく。そこに一人当たり粗利目標が記載されていることはめったにない(裏で計算されている会社は多くあるが)。賃上げに決定的に重要な経営指標は、一人当たり粗利益である。

一人当たり粗利益が高すぎて公表していない企業、低すぎて公表していない企業等、さまざまある。高すぎる企業は、設備産業であることが多い。経営者からしたら、労働生産性が高いのではなく(重要ではなく)、設備生産性が高いという認識がある。  

社員一人当たり粗利益は月100万円をめざす

コンプライアンスをしっかりして、相場以上の賃金を払い、相場以上の休日を確保し、相場以上の賞与を払い、退職金も用意して、有能な人材を引き止める経営をしたい。そのためには、一人当たり粗利益は月100万円以上ほしい。できれば月120万円以上ほしい。私は今後、この粗利益月100万円は、人手不足時代・高労働生産性社会を勝ち残るための絶対基準だと考えている。  

一人当たり粗利益を上げる経営計画

経営コンサルタントを雇って作成した立派な経営計画を拝見することも多い。この経営計画書を何回読み直しても「一人当たり粗利益」を上げる戦略・戦術がかかれていない。「もっと営業しましょう」「もっと魅力的な商品を開発しましょう」「もっと採用に力を入れましょう」「もっと教育制度を充実しましょう」とかかれている。その多くは、社員の処遇改善の具体的な道筋は示されていないことも特徴的だ。

いま必要なのは、人をそれほど増やさずに一人当たり粗利益を上げる、具体的な経営計画だ。

それは値決め(値上げ)であるかもしれないし、生産・物流工程の見直しであるかもしれない。大胆な省力化投資かもしれないし、商品・事業そのものからの撤退であるかもしれない。もちろん、多くのコンサルタントが指摘するように、長い時間がかかるが、経営者の哲学・価値観を徹底教育し、稼ぐ社風をつくっていくことに異存はない。  

スクラップ計画が必要

ソニーの創業者である井深さんは次のようなことを言っている。

「企業体の中にあって、何をやめるべきかが、非常に大切である。新しい分野に展開する秘訣は必ず捨てなければならない分野のものを捨てることであろう。資力に限度があり、スペースに限度があり、特に能力のある人に限度があることを知らなければならない。」

つまり、ビルドの前にスクラップせよということである。

でも、この捨てる作業、具体的には売上を下げるということは、とてもやりにくい。経営者の本能としてやりにくい。だから、確かな戦略と勇気が必要となる。

それにしても、人を使って利益を出すという企みは、大きな曲がり角にきている。だから、一人当たり粗利益目標を決めて、そうなるようにシミュレーションを繰り返し、具体的な経営計画をたてることが欠かせない。これからは、売上を追った先に一人当たり粗利益の向上が実現できる確率は極めて低い。

言い方を変えれば、少ない分け前を少ない社員で分け合う作戦を立て、今いる社員を大切にして定着を図る。社員の皆さんの年収を●年後このようにしていきたいので、粗利益をこれだけ確保したい。そのための施策として・・・という経営計画が必要なのだ。

換算方法にもよるが、日本はもう一人当たりのGDPにおいて韓国に追い抜かれている。これはジャブジャブの金融で潰れるべき生産性の低い企業・事業が潰れずに温存され続けたことが大きいとみている。スクラップ&ビルドで常に生産性の高いところに人・物・金・情報を集中させなければならないはずなのに、日本企業及び経営者は必要なスクラップを怠った。負けは必然である。

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