基礎控除103万円→178万円で「手取りを増やす」ことにはなりません

国民民主党の選挙公約

パート従業員の「手取りを増やす」と公約にかかげた国民民主党が、先の選挙で躍進しました。基礎控除103万円を178万円に引き上げることで実現するといいます。これにより7.6兆円の減税になるという。なるほど、手取りは増えそうな議論です。

手取りは増えず、減ります

確かに、基礎控除103万円の178万円への引き上げは、所得税・住民税は減ります。

社会保険加入51人以上の事業所では、
年収106万円では、所得税1,500円、住民税13,000円です。
これが基礎控除178万円に引き上げられると、所得税も住民税も0円になります。
しかし、社会保険加入要件(月88,000円以上かつ週労働時間20時間以上)を満たすことになり、そうなると、社会保険料本人負担が164,830円となり、手取りは逆に150,330円減少するのです。

企業規模にかかわらず、
パート従業員の年収が130万円以上なら、所得税13,700円、住民税37,000円になるのに対し、
基礎控除178万円に引き上げられると、所得税も住民税も0円になります。
しかし、年収130万円を超えると、社会保険の被扶養者になれませんので、単独で社会保険に加入しなければなりません。そうなると、(国民健康保険に加入するか、または)週30時間以上勤務するニーズが生じますので、会社で社会保険に加入した場合、社会保険料本人負担が202,150円となり、手取りは逆に151,450円減少します。

日本の最大の壁

米国はIRS(内国歳入庁)といって、税と社会保険を一体化して徴収します。日本は社会保険庁・国税庁に壁があり、一体化の考えがありません。これが最大の壁なのです。本当に「手取りを増やす」ことを考えるなら、税と社会保険の仕組みを抜本的に変えないといけないのです。しかし、これが既得権益、制度上の壁に阻まれて何十年もできないわけです。ちなみに、月額88,000円(いわゆる106万円の壁)と企業規模51人以上の要件は撤廃することを厚生労働省は打ち出しています。国税庁は国税庁、厚生労働省は厚生労働省、で協議することなく、相変わらず自由にやっています。

上記のような議論が国会でされる気配は一切ありません。議員さんたちの会合では、某党首の不倫問題が取り上げられる程度です。

来年は厳しい年になりそうです。自分の城(会社)は自分で守る、決意を新たにします。

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