中小企業の昇給月は10月になる?!

一番多い昇給月は?

 会社の昇給月で一番多いのは何月でしょうか?それは「4月」です。春闘が2月~3月にあって、大手企業の賃上げ(主にベア)が決まった後に、中小企業も含めて日本の産業界に広がる慣行があるからです。また、決算月が3月、昇進昇格が4月、という理由もあると思います。そして、新卒一括採用で4月入社にあわせているのだという会社もおありです。

 5月、6月、7月昇給なども多いです。特に、4月、5月、6月で社会保険料の等級が決まるので、7月昇給としている会社も多いです。

決算月の直後に昇給

 先にも述べたように、決算月の直後、つまり、営業年度の初月に昇給をするという会社も多いです。昇進昇格もこの月に行うことが一般的なので、同時に定期昇給も行うというわけです。

 中小企業の決算月は、節税の都合、税理士の都合、自社の業務の都合、など、実にさまざまな要素で決まりますので、この理屈で言えば、昇給月も多様になります。

最低賃金アップのこれからの影響は絶大

 特に多くの会社で、パートタイマーの昇給月はすでに10月になっています。昇給したいわけではないのですが、政府が勝手に昇給月・昇給額を決めるからです。つまり、最低賃金の引き上げは毎年10月です。

 最低賃金は、都道府県別に8月までに答申が行われ、最低賃金審議会の意見をもとに最終決定されます。

 2024年、きっと当初の予想通り50円アップかなと考えていた徳島県が、答申、審議会の意見により、8月末になんと過去最大の84円の引き上げになったのはご存知の通りです。

 この最低賃金は、来年は平均60円台以上の引き上げが想定されます。60円台以上というのは何を意味するのでしょうか。仮に月間平均所定労働時間170時間の会社があったとします。60円×170時間=10,200円の月給アップとなるのです。

中小企業の社員の昇給月は10月になる?

 社員の給与のボトムは、時給は1,200円程度(20万円程度)であることが多いので、まだ余裕があります。しかし、時給1,200円が最低賃金になるのも時間の問題です。会社のベースアップを、最低賃金が急ピッチで追いかけてくるのです。

 もちろん、そんなことは気にせず、大手企業を中心に社員の給与をドンドン上げていける企業は関係がありませんが、中小企業・零細企業は、毎年10月に最低賃金がどうなるのか、既存の社員の最賃割れはないか、既存社員(先輩・後輩)のバランスはどうか、を気にせざるを得ない事態となるはずです。

 多くの会社の昇給が4月であれば、10月に改めて是正昇給をしなければならないことが起こり得ます。

 賃金の歴史の未来の教科書に、
「日本は・・・の理由で4月昇給が多かったが、最低賃金が毎年平均で●%アップし続ける”官製昇給”を継続したため、中小企業の多くはそれにキャッチアップするため昇給月を10月にせざるを得なくなった。2040年に大半の中小企業の昇給月が10月となったのはそのためである。しかし、最低賃金を引き上げ過ぎたために2030年代後半に以下のような深刻な経済的副作用が起こることとなった。・・・」
とか記載されるのです。

 4月にヨソの昇給率を探りながら昇給し、10月も最低賃金を気にしながらボトムの是正を行う。ベテランパートから「なぜ、12年勤務している私と1ヶ月前に入った(教えても仕事の覚えが悪い)Aさんと10円しか時給が変わらないのですか?」と詰め寄られる。経営者にとっては、もうウンザリです。特に、パートを多く雇う飲食店・小売店はいま、この心境にあるのです。

目次