60~65歳 嘱託給与こそ「年俸制」にしよう 2022 10/03 評価・給与 2021年8月19日2022年10月3日 なぜ嘱託給与に年俸制か? 私は年俸制の導入について原則として反対している。実質的に業績・本人成績によるアップダウンが難しいからだ。プロ野球のような明確な査定基準がないと結果として高止まりする。したがって、月給+賞与という体系がもっとも運用が容易で、法的な問題をクリアできる。 もっとも、60歳~65歳の間は、1年単位契約を前提に年俸制もありえると考えている。「月給+保証賞与+業績賞与」と構成する。「月給+保証賞与」の部分が年俸制というわけだ。年俸制で確定した年収に加えて、会社業績・本人成績が期待以上であれば、業績賞与を加算できるとする。つまり、年俸ベースで59歳からの減額率を考える。 ここでいう業績賞与は「決算賞与」や特別の功労が認められた場合の「特別賞与」という意味で考えてもらえればよい。 具体的なこんなケース たとえば、月給35万円、年間業績賞与70万円(年収490万円)の社員がいるとする。仮にこの社員が60歳定年時に月給21万円、年間“保証”賞与を97.8万円(年収350万円)に変更されたとしよう(年収ベースで28.5%カット)。そうすると、ハローワークからの高年齢雇用継続給付を年間378,000円(非課税)満額受給できる。所得税等を引いた手取りは59歳時点に比して、17.5%減にとどまることになる計算になる。 同一労働同一賃金に注意 ただし、基本給・賞与を60%未満に引き下げると会社が敗訴(名古屋地裁令和2年10月28日)している。いわゆる同一労働同一賃金関連の訴訟だ。同じ仕事をさせている、させざるをえない中小企業においては減額のラインはこの限度にとどめることが肝要である。 まだまだ使える高年齢雇用継続給付 年収ベースで6割以上を確保しながら、上記ケースでは年収490万円を350万円に、つまり年収を約3割カットしても、本人の手取り減額率は17.5%カットにとどまることになる。社保も税金も非課税の高年齢雇用継続給付の存在は大きいといえる。 逆に年収をカットしないケースにも活用できる。保証賞与の割合を増やし、月給を減らすことで誰でも年間30万円(非課税)給付金を確保でき、嘱託社員は喜ぶはずである。 ちなみに、この高年齢雇用継続給付金は2025年4月以降に60歳になる方は「現行:賃金の最大15%が支給」から「改正後:最大10%」に縮小されることになっている。つまり縮小廃止の方向である。いま活用を促進しておくべきである。 60歳定年・1年単位契約の継続雇用は維持しなさい 注意点は1年契約で毎年保証賞与は査定により見直す仕組みとする。意欲・能力・成果にかける場合は翌年の保証はない。さらに定年延長はしないことだ。60歳再雇用、以後1年契約であるからこそ賃金改定の柔軟性が確保できる。 高齢化は一層進み、パート・若年者を中心に賃金コスト(社会保険料上昇分含む)は激増する。知恵と工夫で乗り切りたい。 評価・給与