賃上げ圧力高まる!インフレ手当は必要か?

儲からないのに賃上げ圧力強まる

40年ぶりにインフレに突入した。したがって、今のリーダーの多くはインフレを経験したことがないといえる。しかも、円安・輸入物価高で国内物価が押し上げられるコストプッシュインフレなので、企業の利益は圧縮される、悪いインフレだ。しかし、国内のデフレ・ギャップは20兆円近くあり、米国のようなインフレにはならないだろう。


もっとも、円安はとどまるところなく、確実にインフレ基調であり、社員の生活は苦しくなるので、企業は賃上げ要請に悩まされる。そこで悩ましいのが、儲からない時代の賃上げ対策だ。
 

市場連動型賃金にこだわりなさい

月例賃金は労働市場の”10%高程度”としておくべきである、というのが私の持論である。その代わり、成果を上げた者には賞与は青天井でも良い。


たとえば、下記が労働市場価格だとする。
月給30万円✕12ヶ月+賞与60万円=420万円
 
その場合、自社では、
 月給33万円✕12ヶ月+賞与132万円=528万円
 
といった具合に、月給は10%増し、年収ベースでは年収相場の25%増しをねらう。立派な経営だと思う。月給は下げることができないから、上げることができない。賞与は下げることができるので、上げることができる。上記の例は、中堅社員からベテラン社員の賃金であるので、何度指摘しても変化についてこれない、改善が見込めない場合、実績主義として賞与がバサッと減額されることになる。これがプロの世界である。
 

市場価格連動にこだわる理由をもうひとつ

私は、すべての社員が20歳で入って、70歳まで一つの会社で経営の意思に沿ってパフォーマンスを発揮してくれるとは思っていない。その間に、商品サービス・ビジネスモデルが変わり、マーケティングの仕方が変わり、組織人事の仕組みが変わる。経営者も変わるだろう。当然、能力・価値観などがアンマッチの人材が出てくる。そのときに、賞与を減額しても月給が高すぎれば、お辞めいただくことが極めて難しくなる。月給を労働市場の価格より上げすぎてはいけない所以がここにある。日本の労働法は、まず解雇できないからだ。
 

過去のインフレ時代に起こった現象

高度成長期は売上が上がり、利益が上がる見通しがあった。だから賃金もどんどん上がった。経営者は、基本給ではなく、多くの手当を支給して対応した。私が駆け出しの賃金コンサルタントであった頃、「物価手当」とか「生活手当」とか一律についていることも多かった。退職金や賞与にひびかないようにする配慮だ。しかし、当時はデフレ不況真っ只中。デフレ時代にインフレ対応目的手当が残存していたことになる。
 

インフレ手当を出したい場合

業績が良いお客様からインフレ手当やベースアップの相談がある。その場合、私は以下のようにコメントする。
 
1 まず初任給を含め、若手の基本給を底上げし、20代の若手をいま積極採用してください。つまり、市場価格に対応するため若手中心にベースアップをしてください。


2 次に中途採用者で割を食っている30代の給与を是正して市場価格にあわせてください(離職を招きます)。


3 上記を実施して余力のある場合は一時金で賞与月とは異なる月に「インフレ手当」を支給してください(会社業績が低迷すれば来年はありません)。


4 3で不十分な場合、定期昇給に加算して、月額1000円~3000円底上げ昇給を行ってください。いわゆるインフレ対応ベースアップです。

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