社員の転勤拒否に困っているのですが? 2022 8/26 評価・給与 2016年2月4日2022年8月26日 中堅以上の企業になれば、転居を伴う転勤命令による全国的な円滑な人員配置が労務管理上、必須になります。しかし、「私は転勤できません」「転勤するなら辞めたいです」との声が昨今頻繁に聞かれるようになりました。 夫婦共働き・男性の家事参加・ワークライフバランスの社会的要請が高まっており、転勤命令を拒否した場合に解雇等できるかの基準は、「仕事と家庭の調和」の方向へ大きく修正されています。つまり、転勤拒否したら解雇だ、という就業規則上のルールなどはぶっ飛んで、昭和の時代の「転勤命令を拒否したら会社に居れない!」という従業員の価値観は実務上もうなくなるのです。 だとするなら、以下の重大問題が発生します。 1 全国展開している企業は円滑な業務運営が困難になる(彼・彼女を転勤させることができると思っていたのに、断られると事業計画が狂う。それも続けて断られると経営側のストレスがとても大きい) 2 就業規則は「転居を伴う転勤を無条件で受け入れる」ことが前提だが、拒否することで「お咎めなし」なら、嫌だけど受け入れてくれる社員との公平感が保てない。 実務の現場では、大きく2つの解決策に帰着します。 その1 転勤応諾者にインセンティブをつける 原則、転居を伴う転勤は本人の合意を前提にして、転勤の応じた人に期間限定で「転勤手当」等のインセンティブをつける(社員の士気に配慮しながら、公平感はなんとか維持できるが、転勤できると見込める人は極めて少なくなる可能性がある) その2 地域限定社員を設ける 本人の選択に基づき地域限定社員を設け、無限定の社員と報酬格差をつける。ただし、中堅企業以上の場合、少なくとも「新卒」は原則、「無限定」にしないと円滑な業務運営が難しくなる。一方、関西地区に本社を有する企業が関東で人材を採用する際に、「転勤がありえる」という労働条件はとてもマイナスに働くので、企業ブランド、業種等の採用力との兼ね合いで決定。 報酬格差はどれくらいかといえば、‟基本給の5%~15%”が限度ではないかと思います。ただし、大手企業でもなければ、元々報酬があまり高くないケースがあり、この格差もつけにくいことが多いです。今度は地域限定社員(特に関東エリア)の人材募集が初任給で負けてしまい人が採れないということが起こったりします。 また、あまりに報酬格差が大きければ、地域限定と無限定の転換を悪用した裏技を使ったり、転勤辞令を発した途端に「実は転勤できません」という人が出てくるので注意です。この「実は・・」の人に対して、理論上、報酬の返還を求めることができますし、解雇の話にもなるのですが、こんなことを企業は望んでいないのです。 さらに、職位によって、限定要件を解除する(店長以上は地域限定ダメ)とするなどはでますが、これも、優秀な店長で、転勤が家庭の事情でできない人が必ず出てくるので、職位により又は昇進要件に転勤要件を入れるのは優秀な人材の引き留めと活用に影響するので、これも注意が必要です。 どうですか。悩みますよね。 結構、議論する要素が多いと思います。つまり、地域限定社員を議論することは、地域限定でない社員(無限定社員)を議論することになり、結局は、企業全体の労務政策の転換を意思決定することになるので、チェック項目が多岐にわたるということです。 評価・給与