新聞で見た労働分配率の平均に違和感があります。労働分配率の使い方を教えてください 2022 8/26 組織づくり 2013年11月14日2022年8月26日 新聞等の労働分配率は無視して下さい。話が長くなるので省略しますが、あれはそもそも私たちには使えません。 労働分配率=総人件費÷付加価値(売上-外部購入費)という指標があります。この人件費は「役員報酬+社員給与+賞与+退職金積立+法定福利費」です。 オーナー会社はこの役員報酬というのがクセもので、ときには節税や相続対策の資金作りのため資金をオーナー一族に留保していく必要性があるため、政策的に多めに役員報酬をとることがあります。 そうすると、労働分配率そのものが高く推移します。しかし、オーナー一族の役員報酬を高めれば、その分社員への給与分配率が低くなります。労使が一丸となって業績向上に邁進すべきなのに、労働分配率という指標のみを重視していれば、オーナー役員と社員の利益が相反してしまうという問題が起こります。 黒字の中小企業の労働分配率(社員+役員)はおおむね50%~60%と言われていますが、私は世の中でいう、相場としての労働分配率という指標は実務では使いにくいと考えています。少なくとも、オーナー企業で活用するためには、「社員給与分配率=社員給与等÷付加価値」と「役員分配率=役員報酬÷付加価値」に区分するべきです。 区分したとしても、業種業態によって分配率の相場というのはとても難しいというのが私の見解です。 私のクライアント企業のC社では、社員給与分配率がとても低い会社があります。その会社の社員給与分配率が低い理由は、設備投資により人手に頼らないビジネスモデルを構築しているメーカーだからです。給与の低い若手やパートを上手に活用して経営をされています。そのかわり、減価償却費や金融費用がやや高くついていますね。 クライアント企業のY社も、社員給与分配率が低い会社です。広告・マーケティング投資を積極的に行っており、人手に頼らない営業構造を構築しています。私はY社の社長から売上に締める広告宣伝費の額を聞いて驚きました。 つまり、同じ販売会社、製造会社、開発会社、●●会社と言っても業態や戦略によって社員給与分配率は10%程度異なることはザラなので、分配率について汎用的な指標は見つけにくいと考えています。 ただ、設備投資が必要な業種であれば、労働分配率は50%程度におさめることが必要です。企業様によって50%後半でも利益が出しているところがありますが、これもビジネスモデルに起因しているのです。 社員50名の製造業で、良く見るパターンは、労働分配率50%のうち、40%前後が社員給与(分配率)、10%前後が役員報酬という配分の企業をよく見かけますね。もちろん、これもオーナー役員等の数・報酬の多寡により配分が変わってきます。 したがって、労働分配率を役立てるために必要なことは、貴社における労働分配率(社員給与分配率+役員分配率)の過去5年間の推移です。必達利益を確保するための労働分配率等について、自社のあるべき指標を探ることが一つ目のポイントです。 二つ目のポイントは、中長期的に社員給与分配率を下げていきながら(又は維持しながら)、社員の給与を上げていくためにはどういう経営施策を打つか、中長期の経営計画を立てるうえでの検討指標とするということです。 つまり、そもそも労働分配率にかかわらず、自社にとって最適な比率・数値は財務のバランスを見ながら自分で見つけ出さなければならないということです。一定の比率をもって経営する、というのはとても大切です。 私の経験上、一定の比率・基準をもっている会社は稼ぎ続けています。大儲けはないが、大損はしない、手堅い経営をなさっている例がとても多いです。 組織づくり