新卒初任給 月額25万円時代の賃金管理

新卒初任給は徐々に上がっていく

新卒初任給が25万円(所定内賃金)を超えている企業も珍しくなくなってきました。30万円としている会社もありますね。普通の中小企業ではさすがに残業抜きで25万円は厳しいですが、競争が激しい理系等の場合、関東・関西では月額22万円あたりが完全にボトムラインになっています。

今後は、新卒入社で初年度は賞与無し・残業無しで初任給月額25万円、初年度は賞与なし、次年度より賞与ありなどの求人も多く出てくるのではないかと思います。  

実勢からしては高いと思いますが、厚生労働省賃金構造基本統計調査(2年)によると、  
東京 大卒 男子 238,000円
大阪 大卒 男子 227,200円  
となっています。

統計上、毎年これがジリジリと上がっているのです。

新卒のポテンシャルが上がっているかというと、中小企業にやってくる人の平均能力は残念ながら逆に下がっています。賃金はマーケットの需要と供給の論理で決まります。それだけ若手を取り合っているということになります。若いというだけで高値がついているのです。  

中途採用の初任給はどうなるか?

これも初任給と同様になるかもしれません(特に20代)。新卒が25万円ですので、20代、30代も最低、初任基本給25万円となります。

日本の最低賃金はまだ低いと言われていますので、全国の加重平均が1000円に到達した先にまだ上がっていくでしょう。1300円あたりが適当という議論があります。そうするとパート等の初任時給が1400円程度になっても不思議ではなくなります。フルタイムの月間平均所定労働時間を173時間とすると、1400円✕173時間=242,200円です。新卒初任給月額25万円は決して安くないというわけです。  

基本給25万円は中小企業の何歳の基本給にあたるか?

しかし、実は基本給25万円は、現状の中小企業の50歳の平均基本給です。初任基本給25万円を出すということは、もう定期昇給は無いに等しくなります。つまり、従来の給与制度の前提が崩れていっているといえます。  

定期昇給の前提がもうなくなる?

安くて若い労働力を確保し、育成して、徐々に定期昇給で上げていく。これが日本型賃金システムです。しかし、基本給25万円で入った人に対して、企業は毎年一定の定期昇給をし続けることができるのでしょうか。

おそらく、否でしょう。そうではなく、25万円で入って、一人前になったら1万円上がる、次のステージ(たとえば後輩の指導)になったら1万円上がる、というような「昇格昇給」を前提とした仕組みが原則となるのではないかと考えます。つまり、定期昇給をする余地が限りなく、なくなるのです。

日本は欧州にならって、ジョブ型、職務型に転換するような機運があります。しかし、何も仕事ができない25万円の若手をとるぐらいなら、教えなくても良いベテランの25万円の人をとるのが合理的です。だから、欧州では日本とは違い、若手の失業率が高いのです。

いま、日本型雇用・賃金システムが大きな曲がり角に来ています。

一番変えるべきは、ベテラン経営者の頭の中だと思います。

・初任給を大幅にあげて、退職金をなくす
・初任給を大幅にあげて、定期昇給をなくす(昇格昇給のみとする)
・初任給は20万円だが、週休3日とする
・すべて従業員の初任時給1500円とし、時間給制にする 初任給を大幅にあげて、属人的な家族手当・住宅手当はなくしてしまう
・裁量的な仕事をする従業員は全員ジョブ型・在宅勤務にする
・給与は毎年、労使の個別交渉によって決める 上がることもあれば、下がることもある仕組みをつくる
・若手をとるのをあきらめて40歳以上の中高年ばかりで勝負する
・顧客から料金がもらえない、人手のかかる事業をやめてしまう・・・  

いろいろと悩ましいですが、戦い方はいろいろあります。

目次