営業職のインセンティブ報酬導入のポイント

営業職は特別な報酬制度を導入したほうが良いですか?

「先生、営業職のみ賞与の払い方を変えたほうが良いですか?」
「今度、このようなインセンティブを導入しようと思いますが・・」という相談がある。

営業職が売上・粗利等を獲得した際にその達成額に%乗じて金銭を支給するなどが一般的な払い方。このようなインセンティブ報酬のメリットは、①管理しにくい営業職の成果のみで処遇反映できる、②行動的なリスクテイカーである営業職の特性、により士気を高めやすいことがあげれる。

デメリットは①短期的な成果にこだわりすぎる、②インセンティブ制度のスキマをねらったズル(不正)が起こる、③営業職だけ特別なインセンティブを付与すると、それにかかわる事務、製造の部署から不平不満が出る、など。  

インセンティブ報酬が成功する事例

過去の経験から成功した事例は大きく2つ。一つ目は企業のあるステージにおいて期間限定で比較的“極端な”経営行動が必要なとき、たとえ、ある商品についてとにかく短期間でシェアをとりたいとき、などに有効に機能した。これは企業のある一局面での運用であり、長く続けるものでない。二つ目はアルバイト社員の定型業務において、ある行動を勧める場合だ。たとえば、ガソリンスタンドのアルバイトがオイル交換をお勧めし、受注した場合にポイントを付与するなどだ。  

顧客の利益と社内の一致団結力は大丈夫か?

確かに、インセンティブ報酬を導入するか否かは営業職のやる気を最大限に高めることが目的だ。しかし、最も考えるべきことは「顧客の利益」と「社内の一致団結力」である。インセンティブ報酬を導入することで、顧客の利益になるか、社内の力の総和が最大になるか、これを考えなければならない。  

皆さんも客側で、営業職からの強引な売り込みで嫌な思いをしたことはないだろうか?

最近、M&Aの仲介会社の業績が絶好調だ。M&Aの仲介会社の営業職の年収は1,500万円~2,000万円が平均だ。彼らはM&Aを1件成立させればガッポリとインセンティブ報酬を手にすることができる。ノルマもあるようだ。私はクライアントが会社を売る、又は買うという重大な売買契約において、あまりにも早急に成立を急がされ、又は重要な情報が公開されず、嫌な思いをしたことがある。でも、これがインセンティブをぶら下げられた人間の悲しい自然な行動だと思う。

要するに、手を抜かず経営の意思を示し、評価して支給しなさい

不動産とか、高級車の販売など営業インセンティブ報酬が馴染む業種もある。ただし、昨今はそれが馴染むと言われていた生保会社の外交員について、D生命、M生命はこぞって歩合給の見直しを実施している。経営環境が変わると、インセンティブ報酬制度がうまくいかなくなった好事例である。インセンティブ、歩合的を否定はしないが、目的・期限を明確にして裏付けをもって相当慎重に導入しなければならない。さもないと、経営者が意図しない社員の「自己勝手行動」を誘発してしまうのだ。また、正直者がバカを見て優秀社員の離職を促すこともある。

逆に「僕はこんなに頑張って成果を上げているのに評価と報酬がマッチしていない」「このままだと退職させるを得ない」と言ってクレームを言ってくる若手営業職もいる。このとき社長の気持ちは揺らぐ。でも、十分説明しても、納得いかないならやめてもらったら良い。ひと昔前はそのような人は皆、外資系の保険会社に行ったものだ。とにかく稼ぐということが主眼であれば、めちゃめちゃきつい仕事をやるか、独立してゼロからやるしかない。どうせいずれは辞める人と割り切る。フツーの他の社員を大切に。

要するに、成果は経営の意思で「評価」したうえで賞与に反映する、これが原則である。

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