別れても好きな人 “出戻り”社員制度をつくろう

「裏切り者」とみなすのをやめよう

社員が「辞めます」と言ってきたとき、社長はとても寂しい思いをします。特に辞めてほしくない社員であればなおさらです。こんなとき、「裏切り者」として取り扱ってしまうことがあります。日本はジョブ型雇用システムではなく、メンバーシップ型雇用なので、身内(メンバー)からの離脱は感情的に許せない気持ちがあります。「この忙しいときに・・」「こんなに人が足らないのに」「ライバル会社に転職しやがって」、残された社員に悶々とした思いが募るでしょう。  

しかし、これからは特に20代・30代は超・人出不足になります。そこで、一度退職した人でも、良い人材は「裏切り者」ではなく、「出戻り社員」として再び迎えるようにすることはありえる労務政策ではないかと考えています。  

転職は意外と成功していない

私の京都で社会保険労務士事務所を経営しておりますので、万人規模の従業員データを常時取り扱っています。顧客のA社を辞めて、顧客のB社に転職したなどがデータ上でわかることが複数あります。また、顧客A社→B社→顧客C社などもあります。つくづく思うことは、意外と転職は成功していないのです。たとえば、A社が中小企業、B社が大手企業であっても、大手企業に転職しても1年足らずで辞めて、C社(A社より小さい企業)に転職するなどはよくあります。若いというだけで大手企業に誘われても、大手ではライバルも優秀だし、求められるレベルも高いので中小企業で天狗になった社員が通用しないことがあります。  

関係性をつくって、企業から声かけする仕組みをつくる

中小企業でも制度化していなくても、たまたま、Xさん(在籍者)とYさん(退職者)が仲良いことがあります。そこで、Xさんが絶妙なタイミングで「戻ってきたら?」という誘いを受けて戻ってくるという例は結構あるのです。これは適時適切な「関係性+声掛け」の仕組みが自然とあったことになります。この仕組みを意図的に会社がつくるというものです。退職者が「自分からまた入りたい」というのはなかなか言えないからです。具体的には退職時に情報(連絡先、退職理由など)を聞く、退職者のデータベースをつくる、OB会やネットワークをつくる、パーティーを開くなどさまざまな手法があります。  

「別れた」からこそ見えるものがある

退職した社員は退職した理由が解消されると簡単に戻ってくることがあります。元上司の退職、長時間労働などです。また、会社をいったん離れたからこそ見える会社の良さがあります。特に若い社員は「隣の芝生は良くみえる」ので、いったんリリースしてもまた戻ってくるというのは全くアリでしょう。

出戻り社員は辞めない

いったん退職して、出戻った社員は声をかけてもらった「恩」があるからか、それともよほど会社の「良さ」がわかったのか、ロイヤルティーが高くとても定着率が良いです。会社としても戻ってきてほしい社員であれば願ったりかなったりでしょう。      

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