今どきの弁護士の営業と労使トラブル

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さらに進化を続ける弁護士のネット営業

弁護士のネットによる営業活動がさかんです。その多くは「成功報酬型」となっています。特に弁護士にとっておいしいのは労働者側に立った「未払い残業代請求」です。ぜひ、社長様方は「未払い残業代請求」とネットで検索してみて下さい。その充実ぶりに驚くはずです。  

今どきの弁護士のサービスの一つに退職代行というサービスがあります。

  退職代行サービスというのをご存知でしょうか?

ある社員がいきなり会社に来なくなります。電話をしてもサッパリつながりません。そうすると、弁護士名でFAXが来ます。その内容は、①●月●日付けで退職する、②その間は年次有給休暇を申請する。③本人に一切の連絡はとらないこと、等が記載されています。この退職代行サービスは1回2万円程度です。このサービスの活用は2020年になってむちゃくちゃ増えたように思います。

退職代行サービスだけにはとどまらない!?

でも、退職代行サービス単体ではビジネスになりません。したがって、弁護士の中には「積極的なアップセル」をする方がおられます。その中核が「未払い残業代請求」です。

想定される弁護士の営業トーク

「あなたは未払い残業代請求ができる可能性があります。たとえば、

  • 固定残業代制度で残業代が払われていなかった
  • 営業職で残業代が払われていなかった
  • 管理職・店長で残業代が払われていなかった

などはありませんか?」
「正当な権利ですので請求するべきです」

  本人も退職するのだから、そして成功報酬だし、一定の小遣いにもなるということで依頼します。完全成功報酬で獲得金額の20%~30%といわれています(訴訟等になれば別途報酬ルールあり)。弁護士は内容証明郵便で請求してきます。会社側にとってグーの音も出ない内容なら、裁判・労働審判になる前にサッサと支払いを済ませることになります。弁護士にとってこれほど手離れが良く、おいしいビジネスはありません。たまに弁護士から未払い残業代請求されたら、こちらも弁護士を立てればなんとかなると思っておられる会社に出会うことがありますが、何ともなりません。

未払い賃金の消滅時効が2年→3年→5年へ

2020年4月より民法の消滅時効の改正に伴い、労働基準法の改正が行われ、賃金支払いの消滅時効が2年→3年になりました。当面3年ですが、5年になることが決まっています。これにより弁護士が受注するにあたっての、損益分岐点売上を一気に超える成功報酬がとれますので、小さな案件でもビジネスになってしまうのです。

こんな業種が危ない!備えあれば憂いなし

弁護士もどういう業種業態で未払い残業代があるかわかっています。未払い残業代で中小企業は狙われています。特に危ない業界は、運送業、飲食業、建設業、外勤営業職全般です。大手弁護士事務所はこの辺の労務の実態や攻め方の研究は相当進んでいるように見えます。弁護士は皆、若い方が多いですがノウハウが事務所で共有されているのでなかなか手強い存在です。

私は賃金の消滅時効が5年になったら中小企業は本当に大変だと思っています。近々に賃金体系を変更される場合、未払い残業代請求に耐えうる賃金体系を意識して下さい。そのうえで労働時間管理をしっかりする、これが大原則です。

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