残業代超過分を払う時代の営業手当の見直し方

(超過分の支払い明示が義務付け)

平成30年1月1日施行の職業安定法・指針によると、時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度(いわゆる「固定残業代」)を採用する場合は、以下のような記載が必要となる。たとえば、営業手当を固定残業代としていた場合、以下のような記載が必要。

(1) 本給 ××円(②の手当を除く額)

(2)営業手当(時間外労働の有無に関わらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)

(3)○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給

職業安定法に基づく指針は法的拘束力があるのかといえば、厳密には法的拘束力はない。しかし、法令等を補完する内容であり、指針を守らないと広い意味では法令に違反していることになる場合がありる。

サービス業等での大幅な時間数に対する固定残業代は、採用時、運用時に今まで以上に問題がある。

(こんな会社はもう存続できない)

 A社は社員50名の卸売業。朝は7時には出勤し、掃除を行い、夜は通常20時、遅ければ21時まで毎日やっている。土曜出勤も頻繁にあるようだ。そんな労働実態はタイムカードの打刻にバッチリと残っている。社長は現在73歳でたたき上げでやってきた。社長の口癖は「中小企業で(働き方改革とか)そんな事をやっていたら潰れる」だ。

 給与明細を見ると、基本給、皆勤手当、営業手当、乗務手当、住宅手当、家族手当などがのっている。残業代らしいものは一切のっていない。社長に言わせれば、営業手当(一律2万円)が残業代のようなものだという。36協定なども10年前に出したきりだ。ネットの転職情報サイトにはA社を指して「典型的なワンマン経営のブラック企業」「こんなやり方では将来はない」との記載がある。

(営業マンに残業代を出す時代に)

現在、営業マンを時間管理して「やったらやった分の残業代を払う」という対応は主流派ではない。しかし、今後はこの対応が主流派になりそうだ。つまり、営業手当は月間30時間分の残業代である旨を明記し、超過分は毎月精算するという労務管理だ。これはもう避けようがない。

会社の営業マンに対する労務管理の壁は、適正な労働時間の把握と管理。工場のワーカーなら1分単位で労働時間を把握・管理できる、しかし、外勤営業マンに対して、1分単位で残業代を払う労務管理はどうも馴染まない。しかし、努力する他ない。

(スグに改善すべき労務管理の急所) 

 その1 業務内容を見直す

   不採算顧客、不採算活動を見直す。そのうえで、上記の例では通常業務では月間30時間の残業代で収まるようにする。つまり、実際の残業時間を少なくする。上記のような旧態依然の会社では時短をしてもまず売上は下がらない。

 その2 出退勤替わりのタイムカード管理は止める

 裁判等になれば、タイムカードの打刻は労働していたものと推定される。他に何も反証できなければタイムカードの始業・終業が労働時間と認定される。タイムカードを使うのであれば、厳格に労働時間管理のツールとして活用すべし。

 その3 営業手当を見直す

   一律営業手当2万円とし、超過分を払っていない場合、それが残業代とは認めれない。営業手当も基礎賃金に含め残業代を払うことになる。この場合、賃金体系の抜本変更を迫られる可能性もある。定額(2万とか、3万万円等)の営業手当でも良いが、それなら超過分の支払いが必須である。

 その4 賞与制度を見直す

   残業(代)が多い割に、成果がパッとしない社員は賞与をバッサリ減額することを宣言する。賞与を多めに出して、残業代は未払いという状況は避ける。もうそんな時代ではない。成果と報酬な年収で比例させる他ない。

 その5 営業マンにも残業許可申請制を採用する

   古典的だが、王道にもどる必要がある。営業マンは自由であるので、自分で勝手に帰社時間を決めている。それは朝からもう決まっている。だから、定額残業代を含めた時間、たとえば19時までに帰社するつもりで、スケジュールを立てて、1日を過ごしてもらう必要がある。そのためには、一定のチェック体制がいる。それが残業許可申請制だ。

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