人事評価制度の信頼性を高めるには?

人事評価制度や給与制度のご相談が年明けから相次いています。どの社長様・役員様も大変勉強家で、一生懸命にお考えである事が伝わります。

人事評価制度の信頼性や納得性を高めるためにはどうしたら良いのでしょうか?

多くの真面目な会社は詳細で精緻な「基準づくり」に執着します。評価項目を増やしてみたり、目標管理制度で評価してみたり、客観的な基準を立てようと苦心します。しかし、人事評価制度の信頼性の源は詳細で精緻な「基準づくり」にはありません。一言で言ってしまえば、人事評価制度の信頼性・納得性は、会社、社長、上司に対する信頼によって生まれます。「人事評価制度の信頼性は、それを実施する会社等への信頼から生まれ」ます。こう申しますと、「なーんだ!そんなこといわれても、同義反復でどうしたらよいのかわからないよ、そもそも信頼がないから困っているのに・・」と言われそうです。

日本の統治機構として、三権分立(行政権、立法権、司法権)の仕組みがあります。それぞれ、国民からの信頼、正当性の根拠があり、成り立っていることが不可欠です。立法権の正当性の根拠は、民意の反映です。つまり、多数決で民意が一応反映されているので、法律の中身はさておき、正しいとみんなで認めることとしています。

一方、司法権の正当性の根拠は、裁判所への信頼です。人事評価制度と同様にその制度への信頼が大切なわけです。では、その信頼はどこから来るのでしょうか?それは「手続の適正さ」です。事実を認定するためには、証拠が必要とか、判決に納得がいかなければ上級の裁判所に上訴できる三審制等、プロセスの適正さが確保されているからです。

人間が判断することなので、真実はよくわからない。判断が正しいかどうか、神様でないのでわかりません。それは人事評価制度も裁判も同様です。裁判所の判断でも法令という「基準」は一応ありますが、事案の性質によって個別固有、多種多様なので、裁判官によっての結論はコロコロひっくり返ります。

では、裁判官の判断を統一するために、基準となる法令・規則を個別具体的に書きまくろうとしても、その量や運用コストな膨大となり、そんなことは現実的ではありません。

ですから、私たち経営者も詳細で精緻な基準づくりに走るのではなく、「手続きの適正さ」を磨く方向に舵をきったほうが良いです。

手続の適正さとは、部下(被評価者)の意見をどのようにとりいれるか、評価の前提となる事実はどう把握するのか、誰がどの段階で評価するのか、評価の説明は誰が、いつ、どのようにするか、評価と金額の決定根拠に納得がいかない場合どうするのか、評価者の人格・資質を高めるための取り組みはいつ、誰が、どのようにするのか、評価者毎の甘辛調整はいつ、誰が、どのように行うのか、等です。

こうなれば、人事評価表の項目数を増やしたり、減らしたり、エクセルの点数をこねくり回す時間はなく、いかに評価にかかわる利害関係者で対話と議論を行うのか、という自社に合った「手続きの適正さ」を確保するか、という事になるわけです。

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