管理職になりたくないという人ばかりで困っているのですが?

「管理職は上からも下からも言いたいことを言われて大変だ」

「その大変さと給与が見合わない」

「僕は(私は)リーダーに向かない」など、管理職にはなりたくない人がたくさんいます。

特に就活中の学生さん、若い社員は漠然としたイメージで「管理職になりたくない、出世したくない」と考えているように思います。

私は「サラリーマンは男女にかかわらず、一つの企業で組織のリーダーになれるよう努力しなさい!それが物心両面の充実、ワーク・ライフ・バランスのポイントですよ」ということを若い頃から教育・啓蒙していくべきではないか、と思います。

特に男性はなんとなく出世していくイメージがありますが、女性は出産育児でキャリアが途切れることで、日本の文化が女性に求めるものの都合上、リーダーになるイメージが持てないかもしれません。しかし、これからは女性のリーダーを育成していくことが国家戦略となっています。

日本再興戦略の推進(平成25年6月14日閣議決定)では、「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度にする」と言っています。女性にとっても、自分のキャリアアップやワーク・ライフ・バランスを実現するためには、成長して企業のリーダーになっていくことが望ましいのだということを啓蒙していかなければならないのです。

(啓蒙ポイントその① 自分より後輩にあれこれ指示命令されて楽しいですか?)

 管理職になることで自分の働き方の裁量性や組織への影響度が広がり、やりがいが出てきます。また、一生平社員で終るというのは、自分が年をとるにつれ、自分より年の離れた上司に仕え、あれこれ指示をされるのはあまり気分の良いものではないのでしょう。

 自分の自由裁量や働き方もリーダーになるか否かで異なってくるということも知っておくべきポイントです。

(啓蒙ポイントその② 管理職やリーダーにならないと給与は上がらない現実)

私は中堅・中小企業の賃金、労働時間、働き方を研究する立場にあります。中堅・中小企業で一匹オオカミの専門職を若い頃から目指すというモデルは持続性がなく、処遇向上がなかなか難しいのです。管理職にならない限り、所定内給与が30万円を超えることはまずなくなります。もっと言えば、管理職・リーダーにならない限り、少子高齢社会では、若手の給与は上がり、中高年の給与は下がるので、70歳まで働く時代であれば「最も年収が高かったのが35歳のときであった」という現象はもうすぐそこに来ています。

だから、管理職やリーダーとして働きたくないという人には、それではどんな組織でも「給与は30万円以下で打ち止め」ということをまず若い頃に教えてあげるべきです。それをピークに下がっていくことさえある。それでもいいのですか?そのような人生設計ですか、ということです。

(啓蒙ポイントその③ 高度専門職の道は険しく、管理職・リーダーはそれより易しい)

「管理職」のキャリア上昇の対比語はいわゆる「高度専門職」です。「高度専門職」とは管理職と同等の付加価値・貢献を会社にもたらす人のことです。高度専門職になれば管理職と同等の処遇を実現できるはずだという向きもありますが、これも現実は違います。

高度専門職というのは芸術家の域に達するまで勉強や情報収集を重ねないと企業には貢献できません。「〇〇資格と××資格を取りました、経験もあります」レベルでは労働市場は取り立てて評価はしないのです(医師や弁護士資格を持っているとかはもちろん別です)。

本当の高度専門職は公私の堺が曖昧であり、ワーク・ライフ・バランスもなく、その負荷は過酷です。好きでないと続かない職人・芸術家の世界。このような生活が一般的な人が幸せと感じるとは思えないのです。つまり、高度専門職はタフな生活が求められ、給与と仕事が全く割にあっていない。

そして、高度専門職は一中堅企業や中小企業で育っていくことはめったにありません。一企業にはそれほど深みのある専門的職務はない(事が起これば「真の専門家」に依頼する)ですし、成長の機会を次々に与えることができないからです。

また、その専門技術は技術革新等で一気に陳腐化することもあり、手に職をつければ大丈夫というのは、ビジネスの世界では実はそうでもないことが多いのです。

それに対して、管理職・リーダーというのは若い頃から、テクニカルスキル(専門技能)、ヒューマンスキル(対人能力)、マネジメントスキル(管理能力)をバランスよく磨いていけば、たばねる組織の大小、求められる成果の違いはあるにしても、誰でも汎用的に身に着けることができるのです。カリスマリーダーは求められていないのです。リーダーシップを発揮するというのは何も特別なことではなく、その人なりのリーダーシップがあるので、高度専門職になるよりずっと簡単であり、習得可能な能力でかつ一度身に付いたら生涯のスキルであるということを教えるべきです。

専門職を否定しているのではなく、プラスアルファとして人格・リーダーシップ・管理能力が絶対に必要であり、それがさらなるキャリアを切り開くということです。

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