社長は「評価制度」より「評価」の原点に戻ろう

1 評価というのはニコッと笑うこと

評価というのは、まず相手の存在を認めること、そして、良い行動を見つけたら「ありがとう」といってにっこり笑うことです。社長そして幹部が会社方針に沿った部下の行動を見つけたときに「大げさ」に「評価」「フィードバック」することです。人間は自分で自分を認知できない。外部の評価がなければ存在できない生き物です。評価制度というのはこの延長性上にあります。何も給与制度との連動など難易度が高いものに飛びつく必要はありません。

本来、動物の場合、行動に影響を与える結果(刺激)の出現は、行動直後、60秒以内でないと効果がないとされています。ネズミがレバーを押したら(行動したら)、エサが出る(結果評価)があると、何度もレバーを押し続ける動物実験などが有名です。

一方、人間の場合、言葉があるので2週間以内までは効果があるといわれています。何度も言いますが、評価というのは給与・賞与に結びつけるという固い話ととらえないでください。評価とは、行動強化のことです。行動強化とは、ある行動をすることで何か良いこと(刺激や現象)が起こると、その行動は繰り返される原理のことをいいます。

Aきっかけ → B行動 → Cプラス評価

会議で活発な発言のある会社と、社長や専務しか会議で発言していない会社があります。この会社は過去に発言をした途端、バッサリと誰かに切り捨てられたのかもしれませんね。

その流れを変えたい場合、このようにします。

発言を促す、和やかな雰囲気をつくる、紙に書いてから発表する等、「Aきっかけ」をつくります。そして、なんとか●●君は発言します(B行動)。その発言に対して、みんながうなづいたり、感謝したり、いい発言だとほめたりする等の「Cプラス評価」を行います。このように良い行動に対して細々と繰り返します。

「B行動」そのものは、本人が決めることでコントロールできない。しかし、「Aきかっけ」と「Cプラス評価」は会社がコントロールできるのです。

2 企業が良い企業風土に変貌を遂げるとき

4~5年前はパッとしない企業風土であった企業の成熟度があがり、業績が向上していく現場に立ち会うときがあります。このときの継続的な試みには必ずといっていいほど、「Aきっかけ」→「B行動」→「Cプラス評価」の意図的な政策がありました。最初は消えそうな一部の行動であったとしても会社方針に合致していれば、それにスポットライトをあて評価するのです。

会社の目標・方針を明確に出す、きっかけを与える、行動する、それを大げさに評価する(以下繰り返し)、これは行動分析学が科学的に人間の行動変容のプロセスとして教えるところです。

行動と評価の善循環をつくるには、実は「利他の精神」や、「後工程はお客様」の精神が必要となるのですが、鶏が先か、卵が先かの不毛な議論になるので、とにかく走り出し、会社がコントロールできる「Aきっかけ」と「Cプラス評価」に集中するのです。

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